100年に一度のパンデミック(感染症の世界的な流行)と呼ばれているように、世界がこれほど新型コロナウイルスに翻弄される状況を、誰が予想したであろうか。医療施設や医療スタッフ、医薬品、医療材料、医療機器などが不足する事態に陥っている。今回は不足が伝えられる医療機器の1つである、人工呼吸器の安定供給策について考えてみたい。

日本の人工呼吸器は90%ほどを輸入に頼っている。そのため米国のように「今すぐ(何万台規模の)大幅増産を」と指示しても、すぐに対応するのは難しいだろう。2020年4月24日には日本光電グループが米国で開発・生産している気管挿管型人工呼吸器「NKV-550シリーズ 人工呼吸器」の製造販売承認を取得して国内で製造に乗り出したが、年内に数百台規模の生産になりそうだという。
新たに開発しようにも、承認申請に到達するまでの機器の設計や開発、臨床試験などに要する工数や資金は膨大だ。開発着手から供給までに1年から1年半は必要ではないだろうか。生産設備の確保も容易ではない。業界全体で安定供給体制が整っていない点が課題なのだ。