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 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者のスクリーニングや治療に向けて、複数の医療機器が活躍している。スクリーニングのための検査用機器では体温計やパルスオキシメータ、重症患者の治療向け機器では人工呼吸器やECMO(膜型人工心肺)などが挙げられる。さらに最近になって、後者の重症患者の治療向け機器として「血液凝固分析装置」が注目されるようになった。

 血液凝固分析装置は、血液粘稠(ねんちゅう)度(Clot Signal)の変化を検知・測定する機器である。心臓手術などでの血栓予防や止血予測のための血液凝固状況をモニタリングできる。簡単に説明すると、血液凝固の素因となる血液の粘度を測定して、輸血や輸液を管理するものになる。

アイ・エム・アイが輸入・販売している米サイエンコ社製の血液凝固・血小板機能分析装置「SonoclotモデルSPC2」
アイ・エム・アイが輸入・販売している米サイエンコ社製の血液凝固・血小板機能分析装置「SonoclotモデルSPC2」
(出所:アイ・エム・アイ)
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 血液凝固分析装置が注目されている理由は大きく分けて2つある。1つはCOVID-19の患者の死因として、凝固障害があることが認識されてきたことだ。血液の凝固障害は「血管内皮細胞障害」と呼ばれる疾病に起因すると考えられている。

 国際血栓止血学会(ISTH)が、COVID-19が引き起こす血液凝固障害を防御するための指針「COVID-19の凝固異常に関する暫定ガイダンス」を発表。続いて中国の専門家が自国での治療経験を踏まえて、同ガイダンスに同意する旨を発表した。COVID-19の重症患者の血液の凝固障害に言及し、その粘弾性を調べられる「血液凝固分析装置」の利用を推奨するという説明だった。

 中国でのCOVID-19での死亡率は5%以上で、死亡患者の70%以上が「播種(はしゅ)性血管内凝固症候群(DIC)」という病名と診断されている。重篤な基礎疾患をもつ患者は、血液の凝固機能障害のリスクが高いことが知られている。患者の凝固能を評価するために、血液粘弾性検査の実施が有効になるのだ。