米Apple(アップル)は2021年1月22日(日本時間)、ウエアラブル端末「Apple Watch」の心電図(ECG)アプリケーションが日本で利用可能になると発表した。米国などから2年以上遅れて、ようやく日本で使えるようになったわけだが、医療機器の開発に長年携わってきた筆者からみると、その経緯は「異例ずくめ」と言わざるを得ない。
日本解禁に向けた動きは2020年7月20日にさかのぼる。PMDA(医薬品医療機器総合機構)から新しい医療機器の一般的名称として、「家庭用心電計プログラム」と「家庭用心拍数モニタプログラム」が制定された。そして直後の2020年9月4日にPMDAは、アップルが医療機器製造販売承認を申請していた家庭用心電計プログラムと家庭用心拍数モニタプログラムを承認した。
これは「非医療機器」で取得したデータを使った「医療機器プログラム」を承認した初の事例になるだろう。さらに一般ユーザー向けの製品のために、わざわざ家庭用心電計プログラムや家庭用心拍数モニタプログラムという一般的名称を新設したのも初の試みと言えるだろう。「心電図測定」という難度の高い測定を、一般ユーザーに開放した点も見逃せない。このような「特別扱い」とも思われる事項が続いた。
その後、2020年9月16日(日本時間)のアップルの新製品発表会で「Apple Watch Series 6」が披露されたことから、早期に心電図アプリの日本導入が実現するだろうとの予想が広がっていた。しかし、なかなか実現しない状況が続いていた。なぜだったのか。
そのヒントは、2020年11月24日の「一部変更」承認にあるかもしれない。PMDAがアップルの家庭用心電計プログラムと家庭用心拍数モニタプログラムの一部変更を承認したのだ。一部変更は通常、発売後の医療機器に不具合などがあった際に、企業が変更を申請するものである。それに対して今回は、導入前にもかかわらず、何らかの変更があったことを意味している。