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 血中酸素飽和度と脈拍数をモニタリングできる医療機器「パルスオキシメータ」は、新型コロナウイルス感染症の患者に対する使用指針が示されるなど、臨床用機器としての重要性が世界で認められるようになってきた。その開発には故・青柳卓雄氏の発明があったことは、以前紹介した通りである。

 医療現場からの要望が、パルスオキシメータ発明のきっかけの1つになったという。当時は肺結核患者の血液中の酸素飽和度を測定したくても、血液を直接採取する方法しかなかった。北海道大学の外科に所属していた中島進氏(現在は森山メモリアル病院 院長)は、日本光電の青柳氏のグループが光を使って非侵襲で測定する研究をしているのを知り、その技術を使えば「医療現場で役立つ機器ができるのではないか」と考えた。1972年のことである。

森山メモリアル病院 中島進院長
森山メモリアル病院 中島進院長
(出所:中島進氏)
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 中島氏がその着想と要望を青柳氏らに伝えたところ、実用化へのアイデアが記されたメモが1973年に送られてきた。パルスオキシメータの原理をしたためた手書きのアイデアだった。この原理メモを基に試作した実機が1974年に中島氏の元に届き、同時期にパルスオキシメータとしての初の原理特許申請につながった。

 中島氏が手にした実機は、製品と呼べるレベルではなく、日本光電の社内では「特注品」と呼ばれていたという。実際にはその特注品がパルスオキシメータの初号機であり、それを使った臨床試験が世界に先駆けて行われた。世界初の試みを実行した現場は、緊張や期待に満ちていただろう。