橋の耐震対策として上部構造の落下を防ぐ変位制限構造を巡る設計ミス。和歌山県が2014年度に実施した串本町上田原地区の橋梁上部工事で、設計者の誤認から、本来なら設ける必要がある変位制限構造を省略していた。
日本道路協会の「道路橋示方書・同解説」(以下、示方書)は、耐震設計で想定していない挙動の揺れが発生し、上部構造と下部構造をつなぐ支承部が破壊された場合でも、上部構造の落下を防止できるように検討すると定めている。
特に注意が必要なのが、河川などを斜めに横切る「斜橋」のうち、示方書の判定式で「斜角が小さい」とされる場合だ。地震時に支承部が破壊されると、上部構造が回転して橋軸直角方向にずれ、下部構造頂部から逸脱する可能性がある。それを防ぐため、変位制限構造を設けると規定している。
示方書の判定式では、上部構造の長さを「L」、全幅員を「b」、橋軸と支承の中心線が成す角度(斜角)を「θ」と設定。「sin2θ/2>b/L」が成り立つ場合に、「斜角の小さい斜橋」と判定する。
この橋は桁長が36.8m、幅員が8.2m、斜角が51度なので、判定式が成立する。上部構造の横方向への移動を制限するために、下部構造の頂部に鉄筋コンクリート製の突起を設けたり、上部構造と下部構造をアンカーバーで連結したりするなど、変位制限構造を設ける必要がある。