開発が進められている国産の次世代主力ロケット「H3」。日本のロケット技術と人材をよみがえらせ、世界の一線に再び挑戦できる状況まで引き戻す重要な役割を担うロケットです。そんな注目の新型H3ロケットについて、日経クロステック編集部のバーチャル記者「黒須もあ(β)」が動画で解説します。(日経クロステック編集部)
こんにちは、日経クロステック新人記者の黒須もあ(β)です。皆さん、新型の国産ロケット「H3」ってご存じですか?現在使われている「H-ⅡA」と「H-ⅡB」ロケットに代わる、新しい国産の主力ロケットです。現在開発が進んでいて、2020年度中に1号機の打ち上げが予定されています。今回は、そのH3ロケットの開発状況を動画で解説しちゃいます!
開発順調な「H3」ロケット
H3ロケットは、世界の人工衛星打ち上げビジネス市場に挑戦するため、柔軟性と高信頼性、そして低価格の3つを同時に実現するという高い目標を掲げて開発が進んでいます。開発は順調に進んでいて、2020年2月にはH3ロケット第1段で使う2つのエンジンの重要な試験に成功しました!
どんな試験かというと、2020年2月13日にはメインエンジン「LE-9」のBFT(バトルシップ・ファイアリング・テスト)の8回目が、続く同年2月29日には補助ロケットブースター「SRB-3」の第3回燃焼試験が実施されました。実際に燃焼させて予定通りの性能が実現できているかなどを確認します。
メインエンジン「LE-9」
こちらがLE-9のBFTの様子です!秋田県大館市にある三菱重工業の田代ロケット燃料燃焼試験場で実施されました。BFTとは、日本語で「厚肉タンクステージ燃焼試験」と呼ばれる試験です。実機さながらの配置で、エンジン本体に推進剤タンクや配管を組み合わせて実施します。実際にロケット積むものよりは頑丈な推進剤タンクを使うので、「厚肉タンク」や「バトルシップ」、つまり「戦艦」と呼ばれています。今回は3基のLE-9エンジンを同時に約40秒燃焼させました。
これがメインエンジンLE-9です。実は手前の1基と奥の2基で、エンジンの重要部品である「噴射器」の製造方法が異なるんです!奥の2基は「切削」という一般的な手法で噴射器の部品を造ったのですが、手前の1基は「金属3Dプリンター」という最新技術で造っているんです!3Dプリンターを造った方がコストを安くできるなど、いろんなメリットがあるんだとか。そのため、H3ロケットの量産が始まったら3Dプリンター部品のエンジンを使っていく予定になっています。
このほか、LE-9は世界の他の大型ロケットでは採用していない画期的な技術に挑戦しています!それが「エキスパンダー・ブリード・サイクル」という技術です。エンジンが発生する熱を利用してタービンを回し、エンジンに燃料と酸化剤を送り込むポンプを動かします。構造が簡単でトラブルに強く、コストも安くできるなど、いろんなメリットが同時に得られるのだそうです。打ち上げコストを究極に安くして、再利用可能なロケットに対抗するという作戦だとか!
補助ブースター「SRB-3」
2020年2月29日のSRB-3第3回燃焼試験では、約100秒の燃焼試験を実施しました。海に向かってエンジンを横置きにして噴射させました。SRB-3は今回のテストで、燃焼時間107.5秒最大推力2173kN、最大燃焼圧力は11.0MPaと、ほぼ狙った通りの性能を達成したそうです。
SRB-3はH3ロケットの補助ブースターとして開発されていますが、実はその基本部分をそのまま別のロケットにも使います。小型の科学衛星などを打ち上げるJAXAの小型固体ロケット「イプシロン」の第1段エンジンと共用することで、量産効果によるコストダウンを狙っています。
それでは最後に…
最後の締めに、いつものあれ、お願いします。クロステーック!!!