コンピューターのシミュレーション技術を使って効率的に機械や施設の設計を進める「コンピュテーショナルデザイン」。今回は、そんなコンピュテーショナルデザインを駆使し、職人技と融合させて作られた水族館を、日経クロステック編集部のバーチャル記者「黒須もあ」が動画で紹介します。(日経クロステック編集部)
こんにちは、日経クロステック記者の黒須もあです。みなさん「コンピュテーショナルデザイン」ってご存じですか?コンピュテ―ショナルデザインとは、コンピューターのシミュレーション技術を使って、人間が考えるよりも効率的に機械や施設の設計を進めることです!今回はそんなシミュレーション技術を駆使して設計された水族館「上越市立水族博物館 うみがたり」を紹介します!
この水族館自慢の展示は、施設の目の前に広がる海を再現した「うみがたり大水槽」です!能登半島から佐渡島にかけての日本海の複雑な海底地形を1万分の1のスケールで再現していて、水深は最大7.3mもあるんだとか!このうみがたり大水槽の設計にコンピュテ―ショナルデザインが用いられました。
うみがたり大水槽で再現した地形は、日本海の海底地形の「等高線」を用いて擬岩の高さや位置、形などを割り出しました。水槽内にどう配置していくか、窓や水中トンネルを開ける位置のシミュレーションなどを重ねてデザインを検討していきます。複雑な上越沖の海底地形を水槽でどのように見せたら来場者がいちばん楽めるかを考え抜いて設計したんです。
巨大な窓や水中トンネルなどの複雑な設計でも、実際に実物ができたときにどんな風に見えるのかを何通りでも作って試せるのが、コンピュテーショナルデザインの強みです。大水槽の水流のシミュレーションにも力を注ぎ、その結果から見栄えをよくするべく3Dプリンターを使って立体模型を試作。数えきれないほどの検証を経て、ようやく擬岩の設計に進みます。
実は本番で使う擬岩は、人の手で作られているんです!海底地形は地層が何重にも積み上がり、海流で浸食もされていて、複雑な形や模様をしています。そのため、この地層は機械では表現できないのです。擬岩づくりの職人が完全なオーダーメードで、巨大な発泡スチロールの塊に彫刻刀で1本1本、地層の溝を刻んでいくような根気のいる作業で模型が作られていきます。
模型が完成したら3Dスキャンして擬岩パネルの型を制作。コンクリートで作られた水槽内の基礎に、水中トンネルや擬岩パネルを組み付けていく大掛かりな作業が待っています。魚の隠れ家となるような複雑な擬岩は、来場者が少しでも近くで見られるように窓の近くに設置しました。逆に窓の奥に見える日本海の海底地形は地層などの線が強調されるように配置するなどと、窓越しの近景と遠景の見え方にまで気を配って擬岩を設計しているんです!
この大水槽以外にも、コンピュテーショナルデザインが使われています!例えば「マゼランペンギン ミュージアム」では、マゼランペンギンの巨大コロニーがあるアルゼンチンのチュブ州プンタ・トンボの生育環境を再現するために、岩場と巣穴の配置をシミュレーションして設計しました。完成した岩場と巣穴はマゼランペンギンにも大好評!なんと繁殖が活発になったそうです!
それでは最後に…
最後の締めに、いつものあれ、お願いします。クロステーック!!!