全2436文字
PR

 ただ、残念なことにバーコード系のプリペイドカードや電子マネーなどの対応は進んでいない。

 例えば米国のスターバックスはApple Payを採用していないが、iPhoneやApple Watchの「Wallet」アプリにプリペイドカードのバーコードを読み込ませられる。スターバックス店舗に近づくとWalletアプリが自動的にお薦めしてくれるため、アプリを開く手間なく、すぐにコーヒーの支払いに利用できる。

 だが、スターバックスジャパンのアプリはWalletアプリに対応せず、いちいちアプリを開いてバーコードを表示しなければならない。

 これと似たようなことが、各種プリペイドカードやポイントカードのアプリなどで起こっている。Walletアプリによる利便性向上に消極的なのだ。

 例外とも言えるのが、共通ポイントサービス「Ponta」のアプリである。PontaはWalletアプリにポイントカードを登録でき、ローソンなどの提携店舗で決済とポイントの処理を一度に済ませられる。顧客にとっては非常に便利なはずだが、なかなか対応が進まない。

 この背景としては、開発に時間がかかっている、もしくはWalletの事例が少なく開発を見送っていることが考えられる。一方、Wallet対応を進めると、自社アプリが起動されることなく決済できるため、顧客に対してアプリを通じたプロモーションができなくなってしまう側面もある。顧客の利便性よりもマーケティング優先で、Wallet対応をあえて見送っているケースもありそうだ。

iPhoneでApple Payを利用した様子
iPhoneでApple Payを利用した様子
[画像のクリックで拡大表示]
Apple WatchでApple Payを利用した様子
Apple WatchでApple Payを利用した様子
[画像のクリックで拡大表示]

今後は公共交通機関に期待

 こうした不満は残るものの、日本では交通系電子マネーに対応したことでApple Payの有用性を大幅に高められた。アップルにとっては現状のような限られた都市だけでなく、さらに広げたいはずだ。

 現在、日本以外の公共交通機関でApple Payによる乗車を実現している都市は、中国の北京や上海など4都市、ロシアのモスクワなど3都市、英国のロンドン、米国ではシカゴとポートランド、ソルトレークシティーの3都市に限られる。

 もっとも、交通系は都市圏ごとにICカードが異なる。例えば、同じ米カリフォルニア州でもサンフランシスコ湾岸地域では「Clipper Card」、ロサンゼルスでは「TAP」と呼ばれるICカードを使う。どちらもApple Payへの対応はシステムの更新タイミングを待つことになる。

 米国ではロサンゼルスのTAPが2019年夏以降にNFCベースのシステムへの切り替えを予定しており、Apple Payなどのモバイル決済をサポートするとみられる。引き続き、今後の展開に注目したい。

松村 太郎(まつむら たろう)
ジャーナリスト
松村 太郎(まつむら たろう) ジャーナリスト・著者。1980年東京生まれ。慶応義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。キャスタリア取締役研究責任者として、教育とテクノロジーによる社会問題の解決に取り組み、プログラミング必修の通信制高校、コードアカデミー高等学校の設立などに携わる。近著は、『LinkedInスタートブック』(日経BP社)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP社)など。