オーディオ体験を進化させるHシリーズ
アップルはこれまで、iPhoneやiPadのメインプロセッサー「Aシリーズ」、モーションコプロセッサー「Mシリーズ」、Apple Watchのメインプロセッサー「Sシリーズ」、ワイヤレスチップ「Wシリーズ」、セキュアブートやファイル暗号化を担う「Tシリーズ」といったカスタムチップを展開してきた。今回、このラインアップに「Hシリーズ」が新たに加わったことになる。
アップルは今回のH1について、「ヘッドホンチップ(headphone chip)」と紹介している。AirPodsがこれまで搭載していたW1はあくまでワイヤレスチップであり、Hシリーズはワイヤレスの効率化ではなく、ヘッドホンの質を高めていく方針であることを示しているとみることができる。
H1では接続デバイスの切り替えや音声通話の開始までのタイムラグを大幅に減らしてストレスを軽減したほか、ゲームのようにタイミングが重要な場面での音楽再生の遅延を30%削減した。さらに高音質化を図ったとするが、これについては技術的な背景の解説とレビューを待つ必要があるだろう。
一方、今回のH1で実現しなかったのは、ノイズキャンセリングや音場効果の設定、音の方向と首の動きを連動させた「音のAR(拡張現実)」といった新しいオーディオ体験だ。AirPodsとは別の製品になるかもしれないが、Hシリーズの進化によってこれらを実現していく計画を立てているのではないかと予測している。
ジャーナリスト
