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置き場所自由+同時充電の難しさ
多くのワイヤレス充電器では、製品へのマーキングやデザインの工夫になどより、どの場所で充電するかを分かりやすく示している。前述した磁石による位置合わせもその一つといえる。しかし、AirPowerの紹介映像や会場デモでは、デバイスを無造作に置けることを強調していた。つまり、AirPowerでは充電場所を固定していないことになる。
場所を固定せずにワイヤレス充電を実現する手法には、多コイルやムービングコイルが挙げられる。前者はマットの中に多数のコイルを用意してそのいずれかで充電できるようにする方式、後者はマットの中のコイルそのものが最適な場所に移動して充電できるようにする方式である。
AirPowerの紹介映像や会場デモを見た限り、本体には充電場所を示すマーキングが一切なかった。このため、ムービングコイル方式の採用が有力と筆者は推測していた。
ムービングコイル方式を採用したワイヤレス充電器は既に登場している。しかし、複数のデバイスを載せると、先に置いたものから順に充電するものが多い。一方、3つのデバイスを同時に充電できるワイヤレス充電器も既にあるが、位置合わせが必要となるものが多いようだ。いずれもアップルが求める「より良いワイヤレス充電の体験」というゴールには至っていない。
加えて、AirPowerはマットが非常に薄く、Apple WatchやAirPodsのケースも小さい。さすがにアップルでも実装が困難だったのではないだろうか。複数のデバイスを無造作に置いても同時に充電できるという体験は、想像以上に難しかったのかもしれない。
松村 太郎(まつむら たろう)
ジャーナリスト
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