全2148文字
PR

置き場所自由+同時充電の難しさ

 多くのワイヤレス充電器では、製品へのマーキングやデザインの工夫になどより、どの場所で充電するかを分かりやすく示している。前述した磁石による位置合わせもその一つといえる。しかし、AirPowerの紹介映像や会場デモでは、デバイスを無造作に置けることを強調していた。つまり、AirPowerでは充電場所を固定していないことになる。

米アップルは2017年9月のイベントで、AirPowerを使って3つのデバイスを同時に充電するデモを実施していた
米アップルは2017年9月のイベントで、AirPowerを使って3つのデバイスを同時に充電するデモを実施していた
(撮影:松村 太郎)
[画像のクリックで拡大表示]

 場所を固定せずにワイヤレス充電を実現する手法には、多コイルやムービングコイルが挙げられる。前者はマットの中に多数のコイルを用意してそのいずれかで充電できるようにする方式、後者はマットの中のコイルそのものが最適な場所に移動して充電できるようにする方式である。

 AirPowerの紹介映像や会場デモを見た限り、本体には充電場所を示すマーキングが一切なかった。このため、ムービングコイル方式の採用が有力と筆者は推測していた。

 ムービングコイル方式を採用したワイヤレス充電器は既に登場している。しかし、複数のデバイスを載せると、先に置いたものから順に充電するものが多い。一方、3つのデバイスを同時に充電できるワイヤレス充電器も既にあるが、位置合わせが必要となるものが多いようだ。いずれもアップルが求める「より良いワイヤレス充電の体験」というゴールには至っていない。

 加えて、AirPowerはマットが非常に薄く、Apple WatchやAirPodsのケースも小さい。さすがにアップルでも実装が困難だったのではないだろうか。複数のデバイスを無造作に置いても同時に充電できるという体験は、想像以上に難しかったのかもしれない。

松村 太郎(まつむら たろう)
ジャーナリスト
松村 太郎(まつむら たろう) ジャーナリスト・著者。1980年東京生まれ。慶応義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。キャスタリア取締役研究責任者として、教育とテクノロジーによる社会問題の解決に取り組み、プログラミング必修の通信制高校、コードアカデミー高等学校の設立などに携わる。近著は、『LinkedInスタートブック』(日経BP社)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP社)など。