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他プラットフォームに開放の動きも

 アップルはこの目標をあと2年足らずで達成しようとしているが、その先を見据えると気掛かりな点もある。アップルプラットフォームの限界だ。

 iPhoneは世界で人気の高いスマートフォンブランドだが、スマートフォン市場におけるiOSのシェアは15%弱にすぎない。アップル向けにオリジナルコンテンツを提供する立場からすれば、残りの85%へのリーチを諦めることになる。

 サービス部門に良質なコンテンツを集めようとすればするほど、アップルプラットフォームがかえって足かせとなる可能性があるのだ。ここにジレンマを抱える。

 このため、コンテンツについては他のプラットフォームを巻き込む準備も着々と進めている。例えば音楽配信の「Apple Music」は当初からWindows PCで視聴できるようになっており、Android版アプリも提供する。スマートスピーカーによる視聴も「HomePod」だけでなく「Amazon Echo」に対応済み。「Google Home」への対応も準備中とみられる。

 これまで世界10カ国で展開されてきたApple TVアプリも、2019年5月には100カ国以上に広がる。iPhone、iPad、Apple TV版に加えてMac版が登場するほか、「Roku」や「Amazon Fire TV」といったApple TVの競合製品にも提供する予定だ。2019年1月に韓国のサムスン電子やLGエレクトロニクス、ソニー、米ビジオ(VIZIO)が「AirPlay 2」に対応したスマートテレビを相次ぎ発表したことも話題を呼んだ。

 Apple News+やApple Arcadeなどは他のプラットフォームへの対応について触れていないが、少なくともApple News+はWindowsやAndroidへの展開を視野に入れた拡張がされると推測している。

 アップルが注力するサービスの真価は、実は同社の「プラットフォーム外」で試されることになる。まずはApple TVアプリの動きに注目したい。

松村 太郎(まつむら たろう)
ジャーナリスト
松村 太郎(まつむら たろう) ジャーナリスト・著者。1980年東京生まれ。慶応義塾大学政策・メディア研究科修士課程修了。キャスタリア取締役研究責任者として、教育とテクノロジーによる社会問題の解決に取り組み、プログラミング必修の通信制高校、コードアカデミー高等学校の設立などに携わる。近著は、『LinkedInスタートブック』(日経BP社)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP社)など。