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 2019年6月までに改正建築基準法が全面施行される。目玉は防火関連規制の見直しだ。4階建て以上の中層木造建築物や、耐火建築物とすべき地域でも木の現しが設計しやすくなるなど、木材利用の選択肢が広がる。

 今回の改正は木造建築物にかかる制限の緩和、市街地火災の被害低減対策、既存建築物の用途変更に関する規制の緩和などを柱としている。その中心となるのが防火規定の見直しだ。2019年6月までの全面施行に向け、国土交通省は施行令や告示の見直しを進めている。

 改正では、木材利用ニーズの拡大への対応として、安全性の確保を前提に性能規定化などを通じて設計の自由度を高める。高さ16m以下、3階建て以下の木造建築物は原則として耐火構造の対象外とし、16m超、4階以上の場合でも新たな準耐火構造を設け、木の現しを実現できるようにする。

消防力を加味した設計法

 現行は木造建築物の高さが13m、軒高が9mを超えると一律に耐火構造にする必要があった。改正後は、高さ16m以下かつ3階以下であれば、木造でも耐火構造としなくてよい。ただし、倉庫や自動車修理工場などの基準は高さ13m以下で据え置く。

 高さ16m超、4階以上であっても、壁や柱などの主要構造部で木材を通常よりも厚くすれば、石こうボードなどで覆わなくてもよくなる。消火までに倒壊しない防火性能を満たすことが条件だ。

 改正では、消防力を加味した設計法を新設し、建築物全体の総合的な防火性能を評価できるようにする〔図1〕。18年12月7日に公表された建基法施行令の改正に向けた検討案では、建築物の部分に応じて「通常火災終了時間」などが経過するまで非損傷性、遮熱性、遮炎性を有することを求める方針が示された。通常火災終了時間の下限値は45分とした。

〔図1〕防耐火設計法で中高層の木造を増やす
〔図1〕防耐火設計法で中高層の木造を増やす
左は木造建築物の耐火構造のイメージ。右は新設する設計法のイメージ。例えば、中層の木造建築物で、消防活動が円滑に行えるよう区画などを設計し、通常火災終了時間が86分と算出された場合、それを上回る、火災で90分損傷しない部材を使えばよい(資料:国土交通省の資料を基に日経アーキテクチュアが作成)
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 通常火災終了時間は、告示で計算方法が示される予定だ。国土交通省建築指導課の山口義敬企画専門官は、「防火区画、階段付室の設置、廊下の距離、上階延焼を抑える措置、消火設備の設置など、消防活動が円滑に行える設計上の工夫を要素とした計算式とする」と説明する。