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官公庁の需要増がコンサル転職市場をけん引

 「コンサルティング」業界では2021年の段階から、既に前年を大きく上回る採用がありました。2022年も引き続き、過去最高水準の採用数が見込まれます。

 背景には、コンサルティングファームのクライアントである事業会社による積極的なDX推進があります。ITに関するコンサルティングのニーズは高く、アソシエイトからマネジャークラスまで幅広い層の求人が出ています。人材不足のため、第二新卒採用を強化するコンサルティングファームも増えている状況です。

 また2021年後半からの新しい動きとして、官公庁向けコンサルティングチームの強化が挙げられます。

 デジタル庁新設に伴う中央省庁横断のデジタル化プロジェクトの増加を受け、コンサルティング需要が高まっているのです。マイナンバー対応など、地方自治体のデジタル化や業務改革案件も急増しています。官公庁・自治体担当として、数百人規模の増員を図っているコンサルティングファームもあるほどです。

 このほか、コンサルティング業界ではデータを活用した地域振興「スーパーシティ構想」や、「SDGs(持続可能な開発目標)」「サステナビリティ」「脱炭素」に関わる採用も活発になっています。いずれも公共的な観点が必要となる分野です。自身のキャリアにおいて社会貢献を志向する転職者にとっては、チャンスが拡大していると言えます。

 2022年はコロナ禍が落ち着く可能性を見越して、多くの事業会社が新たなサービスやビジネスの立ち上げを計画するでしょう。既に挙げた業界の他にも、「観光振興」「公衆衛生」「データヘルス」などの分野で積極的な採用が進んでいます。また、社会インフラ系の企業では、経営ポートフォリオを見直す動きも出てきています。こうした活動を支援するコンサルティングファームでは、しばらく活発な採用が続きそうです。

事業部門で直接IT人材を採用する背景とは?

 続いて、事業会社の動きを見ていきましょう。2022年はDXのみならず、事業企業を根幹から変革するCX(コーポレートトランスフォーメーション)を推進するための人材採用がさらに加速する見込みです。製造・流通・金融など、いずれの業界でもIT関係の投資・求人が増加中です。

 最近では情報システム(IT)部門だけでなく、事業部門でIT人材を採用する動きも見られます。目的は、事業部門がITベンダーとスムーズに交渉できるようにすることです。事業部門にIT人材がいれば、より事業に近い立ち位置で各部門特有の課題に向き合い、解決をスピードアップできるメリットもあります。

 ハイレベルなIT人材は転職市場でニーズが高く、複数企業での競り合いになることは珍しくありません。そのため、多くの事業会社では慢性的にIT人材が不足気味になります。

 こうした事業会社ではコスト削減・工数削減のため、情報システムの標準化・クラウド化などを進めています。そのため採用時にはプログラミングやテストといったシステム開発・運用のスキルだけでなく、ビジネスの実情に合致した要件定義スキルなども重視されます。近年ではシステム停止が経営問題に直結することも多いため、セキュリティー対策スキルの需要も増えています。

 IT系のエンジニア職だけでなく、事業開発、SaaS営業、デジタルマーケティング、半導体、EV(電気自動車)、バイオ、SGDs担当者などの積極採用も続くでしょう。

長期化するコロナ禍で求職者のキャリア観が変化

 数年にわたって続いているコロナ禍は、転職者の意識にも影響を及ぼしています。最近、転職エージェントを訪れる人の多くが「コロナ禍で自分のキャリア・人生を見つめ直した」というのです。

 コロナ禍での会社の戦略や方向性に不安を抱いたのをきっかけに、転職を検討する人が増えています。転職先を決める際も、「やりたいことを仕事にできるかどうか」を重視する傾向が強まっています。

 先行き不透明な時代に働く個人が求めるのは、自らの生き方に合った働き方の実現です。中長期的なキャリアの展望が描け、将来の成長機会が得られることも重要です。「仕事の意義(やりがい)」「裁量権(やりたい)」を手に入れられるかどうかが転職を決める際のポイントになっています。

 コロナ禍でリモートワークのメリットを実感し、転職後も継続を望む人が増加傾向です。リモートワークに限らず「柔軟な働き方」へのニーズが強く、そうした制度・環境を整えていない企業は選ばれなくなっています。この傾向を受け、人材獲得のために柔軟な勤務体系を導入する企業が増えていくでしょう。

 企業は「人材を採用して終わり」ではなく、入社後いかに活躍してもらうか、いかに社員のリスキリング(学び直し)をしていくかなど、HRM(ヒューマン・リソース・マネジメント)全体を考える必要があります。「個人の才能を開花させられるかどうか」が、今後転職者に選ばれるためのカギです。改めて、自社の人材戦略を整理していくとよいのではないでしょうか。

 以上のような高需要に支えられ、IT人材にとって2022年の転職市場は領域、働き方ともに選択肢の幅が広がりそうです。多くの組織がDXに向かう大きな流れに、自分の「やりがい」や「やりたい」仕事を重ねられれば、自らの志向をかなえつつ社会貢献の実現も期待できます。今後はこうした個人の持ち味を生かす働き方が、ますます広がっていくでしょう。

藤井 薫
リクルート HR統括編集長
藤井 薫 1988年リクルート入社。TECH-B-ing編集長、Tech総研編集長、アントレ編集長を歴任。2008年からリクルート経営コンピタンス研究所、2014年からリクルートワークス研究所兼務。変わる労働市場、変わる個人と企業の関係、変わる個人のキャリアなど、多様なテーマをメディアで発信。近著に『働く喜び未来のかたち』(言視舎)。