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 2020年は求人を出す企業も、求職する個人も新型コロナウイルス感染症に振り回された1年だった。これを受けて、2021年の転職市場はどう変化するのだろう。転職市場のトレンドに詳しいリクルートキャリアの藤井薫氏、また同社でIT系を中心とした転職支援を手掛ける福井耕造氏、丹野俊彦氏が解説する。

 2021年がスタートしました。今年、転職市場はどのように動くのでしょうか。今回はIT業界を中心に、変化を予測していきます。

 まずは、2020年の転職市場全体の動きを振り返りましょう。2020年6月時点でリクルートエージェントのサービス利用企業2013社から回答を得た調査によると、同年4月の緊急事態宣言後も「採用活動を継続した」「一度停止したが再開した」という企業の合計が約8割に達しました。「コロナ禍でも戦略的人材採用を止めることはできない」といった企業の方針がうかがえます。

 こういった傾向を踏まえ、リクルートキャリアでは2021年は事業戦略ごとに採用戦略の細分化が進むと見ています。事業領域を下記4パターンに分けて見てみましょう(下図)。

  • ●TL(Talent Long)/個人単位で長期成果を目指す
  • ●TS(Talent Short)/個人単位で短期成果を目指す
  • ●OL(Organization Long)/組織単位で長期成果を目指す
  • ●OS(Organization Short)/組織単位で短期成果を目指す
4種の事業領域
4種の事業領域
出所:「戦略的採用論 ―パターン別実践編―」(リクルートワークス研究所、2017年)
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 このうち、採用が縮小しているのが「OL」領域。例えば「新規事業の非正規大量採用」や「サービス業の顧客接点職大量採用」などが該当します。この領域はコロナ禍以前はポテンシャルを重視した未経験者採用が活発でしたが、現在は求人数が減少もしくは採用基準が高くなる傾向にあります。

 一方、「TL」「TS」領域の採用活動はコロナ禍でも継続もしくは拡大傾向です。「TL」には「次世代経営者候補の新卒選抜採用」や「(経営の)後継者候補の厳選中途採用」、「TS」には「重点領域の即戦力エンジニア採用」などが当てはまります。

 つまり1つの企業の中でも事業戦略別に、「守り」と「攻め」の採用戦略が併存することになるのです。特に近年話題の分野における、「TS」領域の採用は活発かつ多様です。対象分野はGovテック、ヘルステック、SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)、セキュリティー、半導体、脱・炭素対応など多岐にわたります。

 つまり「TL」「TS」に該当するような、ウィズコロナ時代の事業変革を担う人材の争奪戦はより激しくなります。経験者はもちろん、先に挙げたジャンルやデジタル技術を活用した変革などに関わるスキルを持つ方にとっては転職のチャンスが広がるでしょう。

「Web面接」は、企業・応募者の双方にメリット大

 コロナ禍の影響は2021年も続くと見込まれ、対面接触を避けなければならない状況が続きます。オンライン化がいっそう進む中、転職市場にはどんな影響があるのでしょう。

 まず、面接はオンラインへシフトつつあります。コロナ禍によって「やむを得ず」始まったWeb面接ですが、結果的には「メリットが大きい」との声が、採用する企業側・求職者(個人)側の双方から上がっています。Web面接の主な利点は以下の通りです。

  • ●面接日程の調整がしやすい
  • ●選考期間が短縮できる
  • ●移動の手間と時間が省ける
  • ●在宅での面接も多く、リラックスして話せる
  • ●遠隔地に住んでいても手軽に面接可能

 フルリモートで採用活動を完結できる企業が増えています。また、転職後の導入研修やオンボーディング(会社への定着、早期活躍につなげる支援)などもオンライン上で行うノウハウが蓄積されつつあります。