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 新型コロナウイルスの感染拡大も4年目に入った2023年、転職市場はどう変化するのだろう。転職市場のトレンドに詳しいリクルートの藤井薫氏によると、全業種でコロナ禍前の水準を上回る求人数が見込まれるという。背景を詳しく解説する。

 転職市場における求人数は、新型コロナウイルス感染症について最初の緊急事態宣言が出た後の2020年6月~8月を底に拡大基調が続いています。筆者が所属するリクルートの転職支援サービス「リクルートエージェント」に寄せられる求人数は2023年1月時点で全ての職種でコロナ禍前の水準を超え、過去最高値を更新しました。いまや企業のニーズに、応募者の数が追い付かない状況になっています。

 実際、リクルートエージェント利用企業を対象とした「2022年度上半期 中途採用動向調査」(2022年4月から9月に実施)では、81%の企業が「中途採用計画に比して実際の採用数は未充足」と回答しています。今回は、この活況が2023年も続くと見込まれるエンジニア転職市場の展望を見ていきましょう。

企業は報酬体系を刷新、転職で年収アップする人が増加

 まず業界を問わない傾向として、報酬体系を見直す企業が増えてきました。外部労働市場の視点を加味した年収を提示可能にし、人材獲得競争において他社に後れを取らないようにするためです。特に重要なポジションに対しては、従来とは異なる報酬体系を適用する企業が増加しています。

 リクルートが実施した調査「2022年7―9月期 転職時の賃金変動状況」では、リクルートエージェントを利用して転職した人の中で「前職と比べ賃金が1割以上増加した」ケースは33.4%と過去最高値を更新し(2002年4~6月期以降)ました。ITエンジニア職ではさらに数が多く、38.7%の転職者が1割以上の賃金アップを実現しています。

 もう1つの傾向は、採用職種の多様化です。今までにない職種の求人や、異なる複数のスキルの組み合わせが求められる求人が増えているのです。特にエンジニアのニーズが高いIT・通信やコンサルティング業界を例に、もう少し詳しく見てみましょう。

求人多数のITエンジニア、ポジションの見極めが重要

 IT・通信業界ではエンジニアが顕著に不足している状況で、中途採用が活発に行われています。景気の先行き不透明感から外資系を中心に一部企業で採用を抑制する動きがあるものの、業界全体としては2023年も一定の採用数を維持するでしょう。

 採用が増えているのはエンジニアだけではありません。最近ではマーケティングやプロダクト企画、新規事業開発といった職種の求人も増加中です。IT業界に知見のある企画職を求める企業が増えているのです。

 人材を確保するため、採用ターゲットの幅も広がっています。例えばシステムインテグレーターや技術者派遣企業はここ数年、未経験者の採用を継続しています。また、家庭の事情などの理由で職歴にブランクのある人の採用も進みつつあります。

 例えばもともとITに素養のある「産休・育休中」「産休・育休明け」の人を採用し、リスキリング(学び直し)によって新しい知識を身につけたうえで活躍してもらうといった動きが出てきました。こうした企業では在宅勤務、フルフレックスなどの制度を整えていることが多く、働く時間や場所に制限がある人も応募しやすくなっています。

 このように求められる職種・採用ターゲットともに以前より広がっているため、IT業界を目指す人、特にエンジニアにとっては年収をアップさせつつ興味のある仕事にチャレンジできる良い時期といえるでしょう。その一方で、多種多様な求人を選べる状況だからこそ、どのポジションで選考を受けるかが重要です。一見似たポジションでも仕事の実態が大きく違ったり、経験やスキル、志向性によって採用率が変わったりするケースも少なくありません。自身の強みを生かせるポジション、やりたいことを実現できるポジションはどれなのか、しっかりと見極める必要があるのです。