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 技術系人材の獲得競争が激しさを増す中で、エンジニアの転職事情は様変わりしている。様々な業界を担当するリクルートキャリアの転職コンサルタントが交代で、最新動向を明かす。第1回は、ハイキャリア・グローバルコンサルティング部 シニアコンサルタント(素材・エネルギー・電機担当)の羽田野直美氏が、自ら手掛けた事例を紹介する。(日経 xTECH編集)

 テクノロジーの進化、それに伴うビジネスモデルの転換――そんな環境変化のスピードが増しています。筆者は素材・エネルギー・電機関連のエンジニアの転職支援を手掛けていますが、エンジニアの皆さんからは「これまで培った専門性が自社で生かせなくなった」という相談をよく受けます。

 そうした方々は、実は業種の枠を越えた意外な場所で、専門知識やビジネススキルを生かすチャンスがあります。と言うのも、近年、大手企業では新規事業への取り組みが活発化しています。新規事業の開発に当たっては、自社の技術・ノウハウを生かしつつ、異分野に進出する傾向が見られます。そのため、異業種から人材を迎えるケースが増えているのです。

 実際、私が転職支援をしたエンジニアにも、異業種で活躍の場を見つけた人が何人もいます。その中から、Mさん(40代男性)の事例を紹介しましょう。20社で不採用となりながらも諦めずにチャンスを探った結果、大手総合電機メーカーの研究開発職から大手化学メーカーの新規製品開発プロジェクトリーダーへの転身を果たしました。

スキルを生かせる求人がない

 「自分がこだわりたいものは、会社にとってはもう重要ではないのか……」

 Mさんは化学分野の大学院卒。大手電機メーカーの研究所に所属し、主に金属・無機材料の研究開発を手掛けていました。

 しかし、会社の方針は材料開発の縮小に傾いていました。材料の要素技術を極めていきたいという思いが強かったMさんは、会社の方向性とのズレを感じ、転職を決意したのです。

 Mさんから相談を受けたときの正直な第一印象は、「優秀だけど、難しい」でした。彼の経歴、専門分野、志向に合致する求人はなかなか存在しない――そう考えました。彼は金属・無機材料の基礎研究を手掛けてきましたが、現在の中途採用市場では、具体的な製品の開発を担う応用開発の求人がほとんど。金属・無機材料関連の要素技術の求人は、ないに等しいのです。

 少しでも可能性があるとすれば、どこだろう。そう考えると、やはり業種を問わず基礎研究部門を持つ大手メーカーが対象となります。そこで応用開発の求人案件でMさんを紹介しつつ、基礎研究の潜在ニーズがないかを探っていくことにしました。

 しかし、最初の3カ月で10社から立て続けに不採用通知を受け取りました。その後もアプローチを続けましたが、「応用開発の分野での即戦力ではない」という理由からことごとく書類選考落ち。自動車、総合電機、重電系メーカー、素材メーカーなど幅広い業種へ対象を広げるも、計20社で連続不採用という結果となってしまったのです。

 「あなたが悪いわけではない、自信をなくさないでほしい。ニーズがずれていただけ」。そんな励ましの声をかけながら1年が経過。Mさんに提案できる選択肢が尽き、私は焦りを感じていました。