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 事業会社でDX(デジタルトランスフォーメーション)を担う人材の採用が積極化している。業種ごとにDXに取り組む目的や、求められるDX人材には違いがある。今回は「不動産業界」のDXと転職事情について、リクルートキャリアで転職支援を手掛ける小谷野進司氏と山副あさ氏が明かす。

 現在、あらゆる業種の事業会社でDX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みが加速しています。これまで他業界よりデジタル化が遅れていると言われていた不動産業界も例外ではありません。「新しい街づくりに携わってみたい」と考えて、IT・通信・ネット業界から不動産業界に転職する人が増えています。今回は不動産業界におけるDX事情と、転職状況を見ていきましょう。

 リクルートキャリアでは、不動産関連企業など事業会社のDXに「1.0」「2.0」という2つのフェーズがあると見ています。「DX 1.0」は、既存の業務プロセスの改革。紙の書類のデジタル化、RPA(ロボティックプロセスオートメーション)ツールによる業務効率化、デジタルを活用したマーケティングや顧客対応などです。2020年、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い非対面・非接触での事業運営やサービス提供、テレワークの必要性が高まったことから、こうした「DX 1.0」に取り組む企業が急増しました。

 そして、「DX 2.0」はビジネスモデルそのものの変革や新規創出です。業界トップクラスの企業の一部は、既に「DX 2.0」のフェーズに着手しています。

「攻めのDX」はプラットフォーム化とスマートシティ

 不動産業界でも「DX 1.0」の動きが広がっています。例えば業界独自の課題の改善として、これまで煩雑だった賃貸・売買契約の手続き効率化があります。サービス面では、現地に足を運ばなくても物件を見られる「VR内見・内覧」などの導入が進みつつあります。

 今後は「スマートシティ開発」「生活全般のプラットフォーム化」といった不動産業界の「DX 2.0」も広まっていくでしょう。

 国土交通省の定義によると、スマートシティとは「都市の抱える諸課題に対して、ICT等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画、整備、管理・運営等)が行われ、全体最適化が図られる持続可能な都市または地区」(国土交通省のWebサイトにある「スマートシティに関する取り組み」より)を指します。取り組みの一例を挙げてみましょう。

  • 自動運転循環バス網の構築
  • モニタリングした電力データを省エネに活用(太陽光発電により、平日は商業施設からオフィスへ、休日はオフィスから商業施設へ電気を供給するなど)
  • AIカメラによる「見守り」で、防犯・安全対策
  • AIカメラ・センサー設置により、人の流れを解析。公共空間の管理や開発、マーケティング、セールスプロモーションに活用
  • ライフログデータを活用した、ウオーキングなどの健康づくり促進

 こうしたスマートシティ開発と同時に大手不動産会社が目指すのが、「生活全般のプラットフォーム化」です。

 大手不動産会社は多様なデータを持っています。例えば建物に設置したカメラやセンサーからは人々の動線のデータが集まります。また、どんな世代・家族構成の人が、どのエリアにあるいくらの家賃の住宅に住んでいるか、持ち家を購入しているかといったデータも豊富にあります。不動産会社が運営する商業施設のクレジットカード、ポイントカードからは、買い物や外食などの傾向データも収集できます。

 このように人々の生活にまつわる多様なデータを収集・活用して新しい街づくりに生かし、地域の活性化、人々の生活の質の向上を目指すのが不動産業界の「DX 2.0」と言えるでしょう。