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 女性の積極的な登用や採用を進める企業が増える中で、妻のキャリアを優先するために転職する男性も出てきている。機械系エンジニアである妻の復職希望をかなえるために転職活動に臨んだITエンジニアの事例を、リクルートキャリア ハイキャリア・グローバルコンサルテイング部の内堀由美子氏が紹介する。(日経 xTECH編集)

 「妻が描くキャリアプランをかなえるためには、僕が転職したほうがいいと思うんです」。転職エージェントである私は、そんな相談を受けることが増えています。

 2016年、「女性活躍推進法」が施行。多くの企業が女性管理職比率を高める目標を掲げ、女性の登用・採用に乗り出しています。つまり、能力のある女性にとってはキャリアアップのチャンスが広がっているということ。そして、キャリアアップ志向が強い妻を持つ夫は、ときに妻のキャリアを優先し、自身の働き方を変えようと考えます。

 例えば、「リモートワークOKの会社に移り、育児の大部分を担えるようにする」「栄転する妻の転勤先へ付いていく」といったように。その結果、「転職」という選択をする人もいます。

 Sさん(20代後半)もまさに「妻のキャリア優先」の選択をした1人。Sさんは妻を優先するあまり、転職活動のプロセスで自身のキャリアを大幅ダウンさせかけた場面がありました。そんなSさんの事例をご紹介します。

 Sさんの転職活動は、米国でスタートしました。彼は米国の大学を卒業し、誰もが名を知る大手グローバルIT企業にエンジニアとして勤務。奥さんは関西エリアの大手メーカーで機械系エンジニアとして働いていましたが、Sさんとの結婚、出産を機に会社に休職届を出し、米国で暮らしていました。

(出所:123RF)
(出所:123RF)

関西に帰りたい、と妻が切り出す

「私、日本に帰って元の会社に復職したいの」

 奥さんがそう切り出したのは、お子さんが1歳を迎える頃。専業主婦生活を送る中で、「やはりキャリアを積む人生を歩みたい」という思いを強くしたようです。そして、「エンジニアとしてブランクが長引くのは致命的」と危機感を募らせていました。

 米国で就職する道も探りましたが、Sさん夫婦が住むエリアはIT産業が主流で、機械系のスキルを生かせる就職先はほとんどありません。もともと在籍している会社の休職期間の満了時期が迫っていること、また関西には奥さんの両親も住んでいて育児サポートを受けられることから、奥さんは「関西に帰りたい」と切望したのです。