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 そこで私は、この分野の専門人材を欲しがりそうな企業に対し、売り込みをかけることにしました。売り込み先として様々な会社を候補に挙げましたが、経験を最も生かせるのは「大手ゼネコン」と判断。Nさんが以前在籍していた会社を除く、全ての大手ゼネコンにターゲットを絞りました。

 Nさんにこれまでの実績をまとめたファイルを作成してもらい、企業を訪問。「この方を受け入れてはどうか」「必ず競争力アップの源泉となる」と打診して回りました。

 「魅力的な人材だが今はポジションがない」という返答が多くを占める中、1社が強い興味を示し、面接をセッティング。その後はトントン拍子に話が進みました。

 その会社で面接に対応したのは、Nさんと同世代でした。Nさんが大手ゼネコン勤務時代にどんな環境下でどんな経験を積んでいたかを明確にイメージできる方々です。「この案件を任せられそうだ」「この課題を解決してもらえそうだ」と、入社後の活躍イメージができたことから、スムーズな内定につながりました。

 そして、その会社としては初めてとなる「50代管理職の中途採用」が実現したのです。

 私との面談の中で、「1社目の大手ゼネコンを辞めたのは失敗だったのかな」と振り返っていたNさんでしたが、約10年ぶりにその環境と地位を取り戻し、年収も前職と比べて200万円アップとなりました。

最大の障壁は、妻の転職反対

 実はNさんの転職活動で最難関だったのは「妻の理解を得ること」でした。

 「契約社員から大手企業の正社員を目指す」となれば、第三者の視点からは「奥さんも応援するだろう」と想像します。しかし奥さんは、過去3回の夫の転職がいずれもうまくいっていないことから、警戒心が強くなっていました。転職後の明るい未来が想像できず、「転職活動」そのものに強い抵抗感を抱いていたのです。

 こうした状況では、転職面談に奥さんも同席してもらい、転職エージェントである私たちから転職市場や転職の可能性を説明することがあります。しかし、Nさんの奥さんの場合はそれすらも拒否されそうな気配。平行線となることが予想される中、私が工夫したのは「メールの文面」でした。

 Nさんに進捗を報告するメールを送るとき、「奥さんが読む」ことを想定した文章を意識したのです。「Nさんの実績は本当に素晴らしい。社会的価値が高いので、もっと生かされるべきだし、求めている会社は必ずあります」といったように、奥さんが目にした場合に希望を感じられるようなメッセージをあえてつづりました。

 後でお聞きすると、Nさんはこのメールを奥さんに見せたそうで、それにより奥さんの態度も軟化したとのことです。