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 DX(デジタルトランスフォーメーション)の浸透で、IT企業では顧客の業務知識を備えた新たな営業職が求められつつある。転職市場における「求められるIT営業像の変化」について、リクルートでIT分野の転職コンサルティングを数多く手掛ける鈴木貞哉氏が解説する。

 この連載の以前の回で紹介したように、企業でDXへの取り組みが広がるにつれ、非IT系のユーザー企業ではIT知識と自社業務の両方を理解できる人材のニーズが高まっています。一方、ユーザー企業にIT製品・ソリューションを売り込むIT企業では、営業職の在り方に変化が出てきました。最近はIT業界未経験の営業職が、IT製品・サービスを扱う企業に採用されるケースが増えています。筆者がリクルーティングアドバイザーとして勤務するリクルートで扱う求人(2022年3月時点)では、IT営業の採用において、IT業界未経験者も対象とする求人が全体の6割強に達しています。

ユーザー企業の現場部門と話せる業務知識が必須に

 この背景には2つの変化があります。1つ目はIT製品・サービスを売り込む先のユーザー企業の変化です。かつて「IT営業」といえば、システムインテグレーターの営業担当からユーザー企業の情報システム部門へのアプローチが一般的でした。ユーザー企業に対して業務システムを提案し、受託開発を担うことが多かったのです。

 ところが、昨今はあらゆる業務分野でDXが進んでいます。情報システム部門だけでなく、マーケティング、企画、営業、人事、経理など多様な部門の現場担当者に対し、IT製品・サービスを提案する機会が増えているのです。

 提案するIT製品・サービスの性質も変わってきました。ITの専門知識がなくても扱えて、現場部門が直接活用しやすい製品やサービスが増加しています。つまりIT営業にも、営業先となるユーザー企業の現場の責任者と対等に話せる業務知識が求められます。IT製品やサービスの導入により、企業の業務がどう改善・効率化されるかを提案できるスキルが必要です。

 そのため、IT企業が自社のターゲットとなる業種・業務分野の知見を持つ人を採用するケースが増えてきました。ITの知識に関しては、入社後の研修でキャッチアップしてもらえばいいと考える企業も珍しくありません。

 従来、日本におけるIT導入はシステムインテグレーターが顧客企業のニーズに合わせ、スクラッチでシステムを開発するケースが主流でした。つまり「働く人に合わせてシステムを開発する」構造です。一方、米国では「開発済みの優れたシステムがあり、企業はある程度システムに合わせた働き方をする」構造です。DXが進むにつれ、日本も後者の形にシフトしています。

 有力なSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)が多数台頭する中、ITサービスに合わせて自社の働き方を変えることで業務レベルを上げようという発想が浸透しつつあるのです。こうした背景から、IT営業では以前に比べてユーザー企業の業務知識が重視されます。高度なIT知識は、以前に比べて必須とは言い切れなくなってきました。

 では実際に「IT知識・経験がなくてもOK」という前提でIT営業の求人を出しているIT企業では、採用時にどんな経験・スキルを重視しているのでしょう。よく見るのは以下の4点です。