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課題5:長い選考期間

 大手企業を中心に、従来の採用活動では「面接は3~4回実施」「応募から内定までは1カ月以上」と期間を要するのが一般的でした。しかし、DX人材に関しては採用競争が過熱しているため、時間をかけすぎると他社に採用で負けてしまう要因になります。

 優秀なDX人材は各企業で引く手あまたですが、転職希望者は一般に、最初に内定を提示された企業に入社する傾向があります。そこで通常は採用に時間を要する大手企業も、DX人材に関しては2週間ほどで選考を完了するケースが珍しくありません。

 特にコロナ禍で主流になったオンライン面接の活用で、面接スケジュールの調整を効率化したり、選考フローを柔軟に変更したりとスピードを重視する企業が増えています。例えば、ある大手企業では面接官となる役員の出張が多いため、面接が毎月1~2回しかできない状況でした。出張先からオンライン面接を実施することでこの課題を解決し、他社に先んじて内定を出しスピーディーな採用を実現しています。こうした臨機応変な対応は、転職希望者にとって企業の熱意を感じ取る要素にもなり、内定承諾の確率も高くなります。特に書類選考の結果が良く、配属部門からの評価が高い応募者は、なるべく早く選考を進めましょう。自社で合否判断に必要な正規のプロセスを省略する必要はありませんが、多忙を理由に日程を後回しにせず、1週間以内に面接することをお勧めします。

課題6:曖昧な選考基準

 今まで新卒採用が中心だった重厚長大な大企業などでは、中途採用の選考基準に学歴や転職回数などを加味する傾向がありました。しかし、最近ではこうした要素よりも、IT・デジタル技術などの専門性・ビジネススキルなどの能力を重視する企業が増えつつあります。とはいえいまだに能力と関係のない要素や、面接で「事業理解や興味・意欲が足りない」「カルチャーにフィットしない」など曖昧な理由で不合格になるケースも見られます。

 逆に、転職希望者が「選考内容に対する納得感が低い」という理由で内定を辞退することも少なくありません。この場合は、面接官の持つDXに関する知識が少なく、質疑応答の内容や合否に明確な理由がないことを転職希望者側が感じ取っているのです。

 以上のような事態を避けるため、DX人材の採用では期待する役割や必要なスキルなどを明確化し、それに沿って合否判断できるようにしましょう。そして主観的な判断になりがちな対人折衝能力や主体性、協調性といったビジネススキルを含め、1次面接から最終面接まで、同じ選考基準を社内で共有する必要があります。専門スキルの合否判断基準を作るのが難しい場合は、外部のパートナー企業や人材エージェントなどから事前に情報収集しましょう。また面接で応募者に対し、募集要項に記した業務内容に関して何ができるか質問し、回答の具体性を確認するのも有効です。

課題7:丁寧な面接対応ができていない

 一方的に質問し、自社の課題や業務内容を説明せず、質問も受け付けない――こうした面接では応募者に仕事内容や事業の実情・魅力が伝わらず、優秀なDX人材を逃す要因となります。求人の募集要項にどれだけ詳細な記述をしても、文章から読み取れる内容と、実際に面接官から見聞きできる情報とでは、全く印象が異なります。面接官からの説明が足りないと、応募者が採用企業に対して不安を抱く可能性があるのです。

 ITエンジニアやDX人材の採用に慣れている企業でも、このように一方的な面接をしてしまうケースは多く、採用機会の損失になっています。面接の機会が多い企業にとって、毎回同じ説明をするのは負担かもしれません。しかし、転職希望者1人ずつに丁寧な対応をすることが、その企業への志望意欲を高めることにつながります。特に書類選考などの評価が高い場合は、面接で応募者の志向に合わせた業務説明をしたり、期待値を具体的に伝えたりすることが効果的です。

 不合格になる転職希望者に対しても、「採用活動は企業アピールの場になる」と考えて丁寧に対応することが大切です。特にコンシューマー向け事業を手掛ける企業では、全ての応募者が顧客になり得ます。また、応募者からの口コミは採用における自社のブランドイメージにつながりますので、極力誠実に面接することをお勧めします。

 以上、DX人材採用がうまくいかない企業にありがちな7つの課題を紹介しました。DX人材が転職に何を求め、仕事のどんな点にやりがいや価値を感じるのかを理解して、具体的かつ丁寧に、そして柔軟に採用を実施していくことが大切です。

安来 裕爾
リクルート Division統括本部 HR本部 HRエージェントDivision ハイキャリア・グローバルコンサルティング コンサルタント
安来 裕爾 1997年、新卒で大手通信会社に入社し、営業、サービス企画、ソリューション推進部門を経験。2001年に大手人材紹介会社に転じ、IT領域の転職支援に従事。2006年にリクルート入社。IT領域キャリアアドバイザー、再就職支援業務を経て、2011年より現職。IT領域で年収800万円以上のポジションの求人コンサルタントとして、約400社を担当。大手・ベンチャーの情報システムならびにDX部門、ITサービス企画、コンサルティング、営業、プリセールスなど様々な職種の採用活動に従事。約6000人のキャリア相談と約1000人の転職支援を実現。