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会社の格よりも、裁量権を重視

 最終的にYさんが選んだのは、Z社でした。会社としての格は大手のX社の方が上といえますが、準大手のZ社を選択したのです。

 Yさんが重視したのは、裁量権でした。X社のオファーは一般社員でしたが、Z社はYさんに管理職のポジションを提示しました。

 これまで、複数の国内大手メーカーで働いてきたYさん。「新卒採用が中心の組織では、中途入社者が管理職に昇進するのはハードルが高い」と痛感していました。入社時点で管理職を約束され、安心感を持てたことが、Z社を選ぶ決め手となりました。入社後にYさんにお会いしたところ、「前職より残業が減った。ワークライフバランスの面でも満足している」と話してくれました。

IT人材の転職、うまくいかない2つの要因

 YさんのようなIT人材を製薬会社が積極採用する動きは、今後も続くでしょう。しかし私がこれまでに携わった案件では、内定は出たのに入社に至らない、または入社してもすぐに退職してしまうといったケースもありました。それには、大きく2つの要因があります。

 1つは年収。製薬業界は他業界と比べても給与水準が高い方ですが、IT業界の一部企業などから提示される報酬と比べると劣ることもあります。Yさんは年収にあまりこだわりがなく仕事内容重視だったためスムーズでしたが、報酬を重視する人は、自らの希望額が応募先企業に対して交渉可能な範囲かどうかを早めに確認しておいた方がいいでしょう。

 もう1つは、製薬分野には法律面など何かと規制が多く、アイデアを出しても実現できないもどかしさを感じることがある点です。これについては、入社前のイメージと入社後の実情にギャップが生じないよう、現場で働く人と話しておくことをお勧めします。

 そのほかにも、IT業界になじんだ人にとっては、カルチャーギャップを感じることがあるようです。それでも、製薬業界なら「人間の健康と命を守る」ことに取り組めます。このテーマに自身のスキルを生かしてみたいと思う方は、ぜひ製薬業界にも目を向けてみてください。

小紫 佑子
リクルートキャリア ハイキャリア・グローバルコンサルティング部 医薬専門職担当
小紫 佑子 2012年にリクルートキャリア入社後、一貫して医薬品業界を担当。臨床開発、MSL(メディカル・サイエンス・リエゾン)や学術、研究開発、品質関連、薬事、マーケティングなど、幅広い職種でのキャリア支援を得意とする。転職を前提としない中長期的な支援も評価されている。