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「技術の社会実装」を目指す研究者にチャンス

 実際に、どんな研究者やエンジニアがGX関連の研究開発職を目指しているのでしょう。例えばある大手メーカー研究所の研究開発担当者は「10年にわたり研究を続けてきたが、製品やサービスとして市場に出たものが1つもない。何のために研究をしているか分からない」「社会の役に立つ仕事がしたい。技術を『社会実装』していきたい」と考え、GX関連のポジションへの転職を目指したといいます。

 環境問題などの社会課題に関心が高く、「自社は環境問題に注力していない。環境問題に取り組む攻めの姿勢が足りない」と社外に新たな活躍の場を求める人もいます。

 こうした目的や不満から転職を考え始めたエンジニアや研究者は「技術的知見は生かしたいものの、研究職にはこだわらない」と言います。まさに先ほど挙げたGX関連のポジションにマッチする志向です。

 なお、官公庁でESG、SDGs(持続可能な開発目標)などの政策に関わるうちに、企業のGX関連ポジションへの転職を検討するケースもあります。「従来は官公庁が政策を担い、民間企業が戦略・実行を担っていたが、GXについてはそれではうまくいかないケースもあると分かった。環境問題などに積極的に取り組む企業で政策から実行までを手掛けてみたい。機動力の観点では、大手企業ではなくむしろスタートアップの方が高いこともある。スタートアップも視野に入れて新たなポジションに挑戦したい」というのです。こうした官公庁の出身者はいち早く政策に取り組んできただけに社会課題への感度が高く、ESGなどが企業の国際競争力の要となると考えています。

GX採用の泣きどころはかつてのDXと同じ

 なおGXに関わるポジションで転職先の企業を選ぶ際は、いくつか注意すべきポイントがあります。以前に「DX(デジタルトランスフォーメーション)」職種の採用がうまくいかなかった企業から得られる教訓があるのです。

 数年前、多くの企業が「DX推進室」などの新組織を立ち上げ、デジタルの専門家を採用し始めました。ところが変革の担い手となるはずのデジタル人材が、比較的短期間で退職してしまうケースが散見されたのです。背景には以下の問題がありました。

・経営陣が本気でDXにコミットしておらず、投資の決断ができない
・経営陣がDXによって目指すゴールを定めておらず、提案に対して適切な判断ができない
・DXの方針が社内に浸透しておらず、各部署からの協力を得られない
・DX推進部署に十分な裁量権が与えられていない

 つまり対外的には「DX推進」を打ち出していても、社内の意識の醸成や体制整備がなされていなかったのです。こうした企業ではせっかく採用したデジタル人材が力を発揮できず、短期間で退職することも珍しくありません。

 GXも新たな取り組みであるため、DXと同じことが起こり得ます。転職先の企業を選ぶ際は、「GXによって目指すゴールが明確か」「その企業の目的・存在意義は明らかになっているか」「GX推進予算や実施期間が定まっているか」「社外だけでなく社内にもGX推進がアナウンスされているか」「自分のポジションにどの程度の裁量権があるか」などを確認しておくとよいでしょう。

羽田野 直美
リクルート Division統括本部 HR本部 HRエージェントDivision ハイキャリア・グローバルコンサルティング コンサルタント
羽田野 直美 工学部応用化学科を修了後、電池メーカーにて研究開発に従事。2004年にリクルートエイブリック(現リクルート)に入社。製造業を中心としたキャリアアドバイザーを経験。2010年からはハイキャリア部門のコンサルタントとして、ディレクタークラス、高度専門職などのキャリアコンサルティングに従事。得意分野は、環境・エネルギー・プラント・ESG・SDGs。米国CCE,Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー。国家資格キャリアコンサルタント。