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 コロナ禍以降、大都市圏から地方への転職・移住を検討する人が増えている。地方企業への転職を実現するにはどうすればよいのか。自分に合った優良な地方企業の探し方、採用過程で気を付けるべきことなどをリクルートで転職支援を手掛ける水藤雄章氏、春日将史氏が解説する。

 2020年以降、新型コロナウイルス感染症の流行によって人々の働き方や生活は一変しました。今後のキャリア、さらには「生き方」「ライフスタイル」まで見つめ直した人も少なくありません。こうした変化は、筆者が勤務するリクルートが受ける転職相談にも表れています。コロナ禍以降、転職の際に地方への移住を志向するケースが増えたのです。

 移住希望の増加の背景には、コロナウイルスの感染拡大に伴ってテレワークを経験し、「自分にとって心地良い住環境とは何か」をじっくり考える人が増加したことがありそうです。また、テレワークの普及で「どこにいても働ける」という意識が芽生えたのか、求人を探す際に勤務地にこだわらない傾向も出てきています。

 とはいえ、「地方で本当に自身の経験・スキルを生かした、やりがいのある仕事に就けるのか」と疑問に思う人もいるでしょう。

 そこで筆者が実際に見聞きした転職相談の中から、「やりたい仕事」にこだわって求人を探し、マッチする企業を見付け、実際に地方に移住・転職したケースをいくつか見ていきましょう。

狙い目は地方の優良「ものづくり」企業

 実は、地方には「隠れた優良企業」「有望なスタートアップ企業」が存在しています。中でも移住を視野に入れた転職先として特に有望な分野が「ものづくり」関連の企業です。地方の大学発スタートアップで、世界的に評価の高いハードウエア技術などが開発されていることもあります。

 分かりやすい例を挙げると、「ロケット」や「未来の乗り物」などは街中での開発・実験が難しい分野です。開発にある程度の敷地が必要なため、都市部に比べて土地に余裕のある地方で最先端の取り組みが進められていることも多いのです。

 コロナ禍以降、こうした地方の優良メーカーに「会社の方向性と自分の志向が合っている」「これまで夢だった仕事ができる」などの理由で転職する人が増えています。

 例えば東京の企業でAIエンジニアチームのリーダーを務めていたAさん(30代)は、「経営に近い立ち位置で、大きな裁量権を持って働きたい」と考えて転職活動を始めました。AIエンジニアのニーズは高く、求人の選択肢は豊富です。勤務地にこだわらず、大手を含め約30社を検討したうえで、最終的に九州で医療機器を開発するものづくり系スタートアップを選択しました。

 Aさんは昔、ある疾患で医療機器に救われた経験がありました。上記スタートアップの求人を見て、「今度は自分が医療に貢献したい」という思いが湧き上がったのです。九州はこれまで縁の無い土地でしたが、移住・転職を決意したAさん。移住後はAIエンジニアとしてのキャリアを医療機器開発に生かしつつ、九州の地元グルメやアウトドアレジャーを楽しんでいるそうです。

 同じ医療機器スタートアップにもう1人、東京から移住・転職したのがネット系スタートアップでCFO(最高財務責任者)まで務めたBさん(40代)です。筆者が「医療分野に変革を起こそうとしている新興企業がある」と九州のスタートアップを紹介したところ、「社会性を強く感じる。ビジネスの成長に自分も主体的に関わりたい」と応募に至りました。

 役員のポジションで同社に採用されたBさんは都心のタワーマンションを引き払い、九州に移住することになりました。Aさんと同じくBさんも九州にゆかりはありませんでしたが、「社会課題の解決に取り組みたい」という強い志向が地方への転職につながったのです。

 一方、「今までとは違う、夢のある開発がしたい」――そんな希望を持って首都圏から地方の企業に転職したのがCさん(50代)です。Cさんはもともと複数の機械メーカーで、主に「乗り物」に関わる設計を手掛けてきました。50代となったCさんは残りの仕事人生について、「これまでの経験を生かしつつ、子どもたちが『わあ、すごい!』と目を輝かせるようなものを造りたい」と考えたのです。希望に沿った求人を探し始めたCさんは、最終的に東海地方で「未来の乗り物」の開発にチャレンジするスタートアップに出会い、転職・移住することになりました。