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社会の変化に伴って企業が求める人材像も変わり、今までにない新たな職種が生まれることがある。最近では企業において、サステナビリティ(持続可能性)を推進するポジションの求人が増えてきた。今回はサステナビリティを推進する人材のニーズが高まっている背景と求められる人材像について、リクルートで環境・エネルギー・ESG・SDGs関連の転職コンサルティングを数多く手掛ける羽田野直美氏が解説する。

 「長年、狭い専門領域の研究開発をしてきたが、このままでいいか迷いがある」「別の業界にも目を向け、新しい可能性を探したい」――転職活動を始める際、このように自分の仕事に新しい視点を取り入れ、今までと異なるキャリア展開を検討する人は少なくありません。以前の記事でもITエンジニアから製薬業界・不動産業界といった事業会社に転身するなど、異業種転職を果たす人たちの例を多数紹介してきました。

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 こうした異業種転職にあたっては、自分のスキルの棚卸しや志向性の整理のほか、企業側にどのような人材ニーズが高まっているか知っておくことも重要です。社会や市場の変化に伴って、企業内に今まで存在しなかった新たな職種・ポジションが生まれ、前例のないような転職につながることがあるためです。そういった観点で、最近注目すべきニーズの1つが今回紹介する「サステナビリティ」です。

環境・社会・企業統治を考慮しつつ「稼ぐ力」を維持する

 サステナビリティとは「持続可能性」を指します。企業活動において短期的な利益を追求しすぎると、時に社会とあつれきを生じたり、環境に悪影響を及ぼしたりする可能性もあります。企業が「サステナビリティを重視する」とは、短期的な利益のみにとらわれず、長期的な視点で社会や環境に与える影響を考慮しつつ持続可能な形で成長を目指すという意味です。

 日本においては経済産業省が2020年8月に「サステナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会 中間取りまとめ ~サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)の実現に向けて~」を公開したことで、改めてサステナビリティの重要性に注目が集まりました。この中間取りまとめではSX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)を、社会的価値(ESG)と経済的価値(稼ぐ力・競争優位性)の両立を図る経営の在り方と位置付けています。

 なお、ESGは環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)などの財務情報には表れない価値を重視する経営の考え方です。ESGを考慮し、適切な取り組みを続ける企業に投資をする「ESG投資」は、今や世界の投資額の3分の1以上を占めています。現在は欧米からのESG投資が主ですが、日本でもその比率は年々増加しています。

 こうした動きを踏まえ、サステナビリティに対する企業の関心は年々高まっています。特に2020年10月、菅義偉首相が所信表明演説の中で「2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする」と目標を掲げて以降、サステナビリティを軸に事業ポートフォリオの見直しやビジネスモデルの転換を推進する企業も増えてきました。現状ではグローバル企業や温室効果ガスの排出量が多い業界を中心にサステナビリティ重視の動きが先行していますが、今後はあらゆる業種の企業に影響が広がるでしょう。どんな企業も、ESGの課題と無縁でいることはできないためです。