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近年、転職市場においてサステナビリティ(持続可能性)を推進するポジションの求人が増えてきた。今回はサステナビリティ人材の転職の実情について、リクルートで環境・エネルギー・ESG・SDGs関連の転職コンサルティングを数多く手掛ける羽田野直美氏が解説する。

 この連載の前回の記事で紹介したように、SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)の推進を目指す企業が増えるにつれ、転職市場に「サステナビリティ推進担当」の求人が増加しています。SXとは、社会的価値(ESG)と経済的価値(稼ぐ力・競争優位性)の両立を図る経営のあり方です。

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 SX関連の求人にフィットするのは、「テクノロジー」と「ビジネス」、両方に知識と関心を持つ理系の人材です。今回は、研究開発など理系の専門職種から、異なる業界のサステナビリティ関連職種に転職した実例をご紹介します。将来のキャリアの選択肢をどのように広げていくべきか、エンジニアや研究職の皆さんにも参考になるケースです。

「やりたい仕事」の追求で、意外な業界への転職が実現

 「まさか自分がやりたい仕事が金融業界にあったなんて」

 エネルギー関連企業でキャリアを積んできたAさん(30代)は、転職活動の意外な帰結に自分でも驚いたといいます。

 Aさんはもともと研究開発職に就いていましたが、研究一辺倒というわけではなく、ビジネスにも興味を持っていました。研究者として特定分野の技術を深掘りし続けるより、幅広い技術の社会実装に関わりたいタイプだったのです。

 「何か新しいことをしてみたい」と考えたAさんは、勤務先のエネルギー関連企業で大きなプロジェクトが終了したのを機に転職を検討し始めました。研究開発の経験が生かせるビジネス寄りのポジション、例えば経営企画などが希望です。

 転職活動を始めたばかりの頃は、Aさんの志向にぴったりマッチする求人はなかなか見つかりませんでした。当初、転職コンサルタントとして筆者が紹介したのはコンサルティングファームやシンクタンクの求人です。しかし、Aさんの研究開発経験を多少は生かせるものの、「フル活用できる」といえるポジションではありませんでした。

 しかし数カ月後、Aさんの希望は思いもよらない形でかなえられることになりました。Aさんに合った求人を探し続けていた筆者の元に、こんな情報が飛び込んできたのです。

 「金融機関が自社および顧客企業のSXに取り組むため、研究所との協議や経営企画を担う理系人材の採用に力を入れ始めた」――まさにAさんが思い描いていた「研究開発経験を生かし、ビジネスに携われる」仕事です。

 Aさんは「まさか自分が金融業界に行くことになるとは」と驚きつつ、自身の志向に合ったポジションにワクワクしながら転職を決意しました。

 実はAさん以外にも、メーカーの研究開発職から金融業界の「サステナビリティ推進担当」への転職例は複数あります。Aさんのように理系の深い専門知識を持ちながら、限られた特定分野の研究では飽き足りない人にとって、SX推進人材としての金融業界への転職は一つの選択肢になりそうです。

 金融以外にも、商社やメーカーなど様々な業界でSXを推進する人材が求められています。特にグローバルで通用する専門知識や経験を持つ場合は有利です。実際の例を紹介します。