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 実際に筆者がコンサルタントとして見聞きした例として、大手メーカーX社に勤務していたロボットエンジニアAさん(30代後半)のケースを紹介しましょう。AさんはX社の前にもやはり大手メーカーY社に勤務していました。「新しいことがやりたくてY社からX社に転職したが、プロジェクトの進行が遅く、いつまでたっても自分がやりたいことを実現できない」と、もどかしさを感じていたといいます。

 「もっとスピード感のある企業でものづくりをしたい。そのためには大手企業ではダメだ」と考えたAさんは、スタートアップを視野に入れて転職活動を開始。その結果、立ち上げ間もない30人規模のスタートアップにCTO(最高技術責任者)候補として迎えられました。まだ小さい会社ではありますが、年収も大手メーカー時代より約10%アップしたといいます。

AIを背景にハードからソフトまで手掛ける新興企業が採用を加速

 なおAさんの転職先のようなロボティクス分野のスタートアップで求人が活発になりつつある背景には、もう1つ事情があります。人工知能(AI)技術を活用し、ハードウエアからソフトウエアまでを一貫して手掛けるスタートアップが増えているのです。

 以前はソフトウエアのみを手掛ける企業が多かったのですが、近年オープンソースの深層学習ライブラリーなどが増えた結果、ソフトウエアだけでは他社との差異化が難しくなっています。そのため最近ではハードウエアも含めて自社で手掛けようとする企業が増え、ロボティクスなどハードウエア分野の知見を持つエンジニアが必要になっているのです。特にニーズがあるのは、センサーから収集した情報をAIで処理し、ハードウエア側の機械制御へ反映する技術。物流・農業・配膳など多くの分野でニーズがあり、これはまさにロボットを専門とするエンジニアの知識が生きるところです。

 これまでは、AI関係のスタートアップ求人というとソフトウエアエンジニアのイメージが強かったのではないでしょうか。しかし、実際にはロボティクス分野を始め、ハードウエア関連も新しく刺激的な仕事が増えています。こうした事業に興味があるハードウエアエンジニアは、転職活動時にスタートアップもチェックしてみるとよいでしょう。

新堂 尊康
リクルート Division統括本部 HR本部 HRエージェントDivision ハイキャリア・グローバルコンサルティング コンサルタント
新堂 尊康 大手電子部品メーカーに技術営業として勤務後、2008年リクルートエージェント(現リクルート)入社。東海3県における製造業専任としてコンサルティングに従事し、大手企業から中小企業まで幅広く担当。現場の技術者や経営者との接点を重視し、事業成長の核となりうる人材の提案にまい進。その後、マネジャー職を経てニュービジネス領域専任のコンサルタントへ。主に、新規事業立ち上げ部署の採用を担当。特に「宇宙・ロボティクス領域」を専門としており、大手企業の新規事業立ち上げや、スタートアップベンチャー企業の事業拡大を支援。