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 なるべく人手を省き、非接触型のサービスを実現したいといった目的で、ロボティクス分野の技術へのニーズが高まっている。同分野への投資も増え、スタートアップ転職も活況だという。ロボティクス分野の転職事情に詳しいリクルートの新堂尊康氏が背景を解説する。

 ここ数年の新型コロナウイルス感染症の拡大により、人々の消費行動は変化しました。それに伴って、ニーズが高まった技術分野の1つがロボティクスです。需要の増加に伴いロボティクス分野のスタートアップ投資も活発になり、人材獲得に乗り出す企業が増えています。今回はコロナ禍前後の変化を交えつつ、ロボティクス分野の転職事情を見ていきましょう。

 ロボティクスと一言でいっても、その言葉が指し示す業界、職種は多岐にわたります。ソニーの「aibo」のようなエンターテインメント向けのロボットのほか、工場で活躍する産業ロボット、高性能なセンサーを必要とするドローンや自動運転車にもロボット技術が生かされています。近年は実店舗における警備や配膳、物流現場の作業などを担うロボットも増加傾向にあります。

コロナ禍で非接触ニーズが高まる

 こうしたさまざまなロボットは、コロナ禍以前は長期的な視点で労働人口の代替として期待されていました。人手が集まりにくい仕事や、危険が伴う仕事をロボットが担うことで人材不足の解消を目指していたのです。

 ところがコロナ禍によって、ロボティクスの活用にはもっと短期的かつ差し迫った目的が出てきました。「多数の人が1カ所に密集するのを避けるため、人手をロボットに置き換える」「センサーなどを活用して非接触(コンタクトレス)型の製品・サービスを実現する」といった、感染症予防を目的としたニーズの高まりです。

 この動きは転職市場にも影響しています。例えば世情に敏感な同分野の技術者は市場ニーズの高まりを察知し、より良い環境を求めて転職活動を始めました。

 さらにロボティクス分野のスタートアップへの投資が増加。良い人材の獲得を目指し、年収などの面で以前より好条件の求人を出すスタートアップが増えています。こうした傾向を受け、大手企業の技術者がロボティクス関連のスタートアップに転職し始めているのです。

 人材が動いているのは、大手企業からスタートアップだけではありません。家電・重工メーカーや自動車会社から、大手の流通・小売りなどの企業に転職するロボットエンジニアも出てきています。これはコロナ禍以前から現在まで続く傾向として、DX(デジタルトランスフォーメーション)の一環で倉庫や工場、実店舗の自動化を進める企業が増えているためです。この流れを受け、小売り、物流、飲食などハードウエアの設計・開発が本業ではない大手企業もロボティクス分野の人材を求めつつあるのです。