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デジタル基盤を担うITエンジニアに大きなニーズ

 DX推進に伴い、製薬業界ではどんな採用ニーズが生まれているのでしょう。製薬会社の一般的なビジネスプロセスは以下の通りです。

(1)基礎研究・非臨床研究
(2)TR研究(トランスレーショナルリサーチ。基礎研究の成果を臨床現場へとつなげるための研究)
(3)臨床試験
(4)製造・物流
(5)販売
(6)市販後調査(薬の安全性・有効性などの調査)・安全性情報

 以上すべてのフェーズにおいて、DX施策の策定・推進を担う人材や、実装を受け持つエンジニアのニーズがあります。

 特にデジタル化の基盤を整えるITエンジニアのニーズは高く、幅広い人に門戸が開かれています。ERP(統合基幹業務システム)、クラウド、セキュリティー、データ活用など、ITに関連する幅広い経験・スキルを生かして製薬業界のDXプロジェクトに関わるチャンスがあります。

 実際、Web関連企業でアプリケーション開発を手がけていた人や、システムインテグレーター、コンサルティングファーム、ゲーム会社などでセキュリティー担当者としての経験を積んだ人、大手メーカーでERP導入経験がある人など、さまざまなバックグラウンドを持つエンジニアが製薬業界への転職を果たしています。

仕事のやりがい、スキルアップへの期待が持てる

 エンジニアの側から見ても、製薬業界への転職にはさまざまな魅力・メリットがあります。例えば大手メーカーから製薬会社への転職を決めたあるデータサイエンティストが、こうつぶやいたことがあります。

 「宝の山ですね」

 冒頭で触れた通り、製薬業界では法改正に伴ってさまざまなデータを活用できるようになりました。データサイエンティストにとっては「分析の素材となるデータが山のようにある。やれることがたくさんある」と、今後の仕事の可能性に期待が高まったのです。

 近年の製薬業界では異業種との協業が進んでいる点も、エンジニアにとっては興味深いでしょう。例えば保険業界では日常の体調管理ができるアプリケーションを契約者に提供するなど、医療業界と連携した新しいサービスが始まっています。大手製薬会社がヘルステックベンチャーと組んでスマートフォンアプリを開発する動きも見られます。

 このように他領域と相互乗り入れしつつ新たなテクノロジーの導入を進めることは、エンジニアとしてのスキルアップにもつながるでしょう。

 また、「健康」はいつの時代も人々の関心を集め、無くなることのない巨大マーケットです。「業界の安定性」という点でも魅力的といえます。

 待遇面のメリットもあります。IT業界から事業会社に転職する場合、給与水準が低い業界に移ると年収ダウンとなることもあります。しかし、製薬業界は平均的給与水準が高いため、前職とのギャップを感じにくいといえるでしょう。