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給与や待遇だけじゃない、製薬業界への転職の魅力

 スキルアップ、年収など実際的なメリットのほか、「社会への貢献を実感したい」といった動機を持つ転職者が少なくない点も製薬業界の特徴の1つです。採用する企業側も、社会貢献への思いがあるかどうかを選考で重視しています。

 実際に製薬会社に転職したデータサイエンティスト、Aさん(30代)の例を見てみましょう。大手システムインテグレーターで大手製造業の顧客を担当していたAさんは、事業会社への転職を目指して複数の業界に応募。内定を多数獲得し、最終的に金融機関と製薬会社に候補を絞り込みました。そして、金融機関のほうが200万円以上年収が高かったにも関わらず、製薬会社を選んだのです。その一番の理由が、「製薬会社のほうがより社会への貢献を実感できると思ったから」でした。

 Aさんがもう1つ引かれたのは、オン・オフのメリハリをつけられ、気持ちにゆとりが持てそうな製薬会社の働き方でした。ヘルスケア関連企業は「健康」を扱う事業を手がけているだけに、自社社員の健康維持・増進に対する意識が高いのです。前職のシステムインテグレーターで納期に追われながらハードな働き方をしてきたAさんにとって、心身の健康を維持できる環境が整っている点も大きな魅力だったといえます。

「DX」に惑わされず、「やりたいこと」を見極めよう

 Aさんの例からも分かりますが、転職の際には「自分が仕事で何をやりたいか」「自分の価値観に照らし合わせて、自分の人生には何が重要か」を整理しておくことが重要です。

 前回の記事で紹介したように、転職活動時に「DX」という言葉にとらわれ過ぎると、「自分にはDXの経験がない」と二の足を踏んでしまいがちです。しかし、実際には幅広く「ITを活用した改善・変革」の経験があれば、これまで培ったスキルを生かしてDX人材として転職できる可能性があります。何らかのITスキルを持ち、DXによって世の中に貢献したいという思いがあれば、門戸は開かれるのです。

 実はこれと同じことがDXを進め、DX人材を求める企業の側にも求められます。

 「うちの会社にとってのDXって、どういうものなんでしょうね」

 筆者が採用活動についてのコンサルティングを実施する際、企業からこんな相談を受けることも少なくありません。DXには確立された定義はありませんので、最適なDXのあり方は企業ごとに異なります。クラウド化の推進やセキュリティー強化などITインフラ面での足場固めだけでなく、アナログな手法から脱せない現場の意識改革などが必要な企業もあるでしょう。自社に必要なDXは何かを見極めるには、ビジネスの現状を分析したうえで、「自社の強みは何か」「今後どういった企業を目指したいのか」を整理しておく必要があります。

 最近の転職市場の状況を見ていると、企業も求職者も「DX」という言葉にやや振り回されてしまっている感があります。DXという言葉にとらわれ過ぎず、企業と求職者それぞれが「WILL(やりたいこと・目指す姿)」を整理して言語化することが重要です。WILLを整理できれば転職市場において適切なマッチングが実現し、その結果としてDXもよりスムーズに進むでしょう。

森 亮二
リクルートキャリア エージェント事業本部 ハイキャリア・グローバルコンサルティング コンサルタント
森 亮二 商社で営業職を経験後、2000年にリクルートキャリア入社。IT領域の転職支援を約10年、製造業領域を約8年担当。現在は、IT領域の担当として、主に事業会社側の社内システム部門の幹部案件を担当する。
鶴岡 通
リクルートキャリア エージェント事業本部 ヘルスケア領域 リクルーティングアドバイザー
鶴岡 通 メーカーで営業職を経験後、2013年にリクルートキャリア入社。法人営業としてヘルスケア業界のベンチャーから大手まで幅広く担当した後、2017年より大手製薬メーカー専任担当となる。