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崩壊の顛末

 複数の工程から成る加工職場を持った工場がある。これをD工場と呼ぼう。この加工職場は5つの工程から成り、各工程には作業者が1人配置されていた。D工場では改善活動が盛んで、作業者は皆、自らの作業に対して継続的な改善活動を行っていた。

 D工場の生産の特徴は、作業効率を追求した「まとめ生産」だ。5つある各工程にかかる時間はバラバラで、作業に時間がかかる工程もあれば、すぐに作業が完了してしまう工程もある。そこで、各作業者は自工程で、ある程度の数量をまとめて作業し、手が空けば他の工程を応援するという仕事の進め方をしていた。各作業者は自工程の中でものの配置や作業の手順などに工夫を凝らしており、受注状況も良いことから忙しく動いていた。

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 ところが、同じ会社の別の工場(X工場)から技術者Y氏が来て、事態は急変した。Y氏は「この工程の場合は『まとめ生産』よりも『1個流し生産』の方が効率的だ」と指摘。X工場にも同じ工程があり、そこでは各作業者が5つの工程を順番に処理して1人で加工を完結させる1個流し生産を実施していた。Y氏はこの方法が最も効率的であると力説し、D工場でも1個流し生産を実施すべきだと提案した。

 この提案をきっかけに、D工場の現場は真っ2つに割れた。提案に耳を傾ける改革派提案に背を向ける守旧派だ。改革派は、他の工場の状況に関心がある若手や中堅作業者が中心。守旧派は、従来のやり方が最も効率的だと主張して譲らないベテラン作業者が主に集まった。両派は対立し、険悪な雰囲気になった。結果、現場には「意思疎通の壁」が出来て、品質や生産性が著しく悪化してしまった。