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コンサルの眼

 A氏の問い掛けた「整理」について考えてみよう。整理の定義は、「要るものと要らないものを分け、要らないものを処分する」だ。ただ、これを文字通りに受け取ってしまうとおかしなことが起きる。実は、現場には「要らないもの」はほとんどないからだ。「何かあったときに使う工具」は、何かあったときには使わなければならないから持っている。あるいは、「そのうち使う材料」も、使うタイミングが来れば使うから置いていると解釈できるのである。

 筆者の体験談を紹介しよう。さまざまな工具であふれかえった工具箱を整理しようとしたとき、中から折れた工具が出てきた。現場の作業者に「これは要らないですよね?」と聞くと、「折れてとがった工具の先が、床の溝に埋まったゴミを取るのにちょうどよいから、これは要ります」という答えが返ってきた。また、その箱の中には曲がったドライバーが入っていた。作業者は「この曲がったドライバーは、機械の奥に落ちた部品をかき出すのにちょうどよいので、これも要るものです」と言う。笑い話ではない。これほどまでに、現場に聞くと要らないものなどないのだ。折れた工具や曲がったドライバーですら要るものになる。

 だが、こうした状態を放っておくと、そもそも工場の中には要るものしかないので、要らないもの(ゴミ)だけを捨てることが、整理と同義語になってしまう。例えば、段ボールの切れ端や部品を包んであったビニール袋、パレットの木の切れ端など、いわゆるゴミは不要なので、こうしたものだけを取り除くということになる。これではただの掃除と同じだ。実は、5Sの時間が掃除の時間と同義語になっている工場は多く、そうした工場では同じような傾向が見られる。

 意外と知られていないことだが、実は、整理には重要なポイントがある。それは、要るものと要らないものを考えるときに、「今、要る」か「今は要らない」か、を基準にすることだ。「今、要るもの」とは、今現在の作業において、それ(材料や治工具など)がなければ、作業がたちどころに止まるものを指す。逆に、今それをどこかに持っていかれても今現在の作業に差し障りがないものは、「今は要らないもの」に分類する。

(作成:筆者)
(作成:筆者)
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