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解決への処方箋

(作成:日経 xTECH)
(作成:日経 xTECH)
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 「今、要るもの」は生産性に直結するので、できる限り手近な所に配置し、なるべく動かなくても取れるようにしたい。一方、「今は要らないもの」は、仮に明日使う材料であっても、今の作業の生産性には影響がない。「明日の材料を目の前に置いて作業すると、今日の作業が速くなるのか?」と考えてほしい。むしろ邪魔になって今の生産性は阻害されるだろう。「今、要るかどうか」という時間軸で考えるのが、本来の整理の考え方だ。

 組み立て工程や加工工程など、付加価値を生んでいる作業工程の周囲では、徹底して「今、要るもの」だけにすることが、生産性向上のポイントである。

 現場が十分に整理されずに、ものがあふれかえっている状況では、必要なものを取るときに「探す」という動作が必ず発生する。加えて、場所がないので、ものを積み上げたり、積み上げたものを使うために下ろしたりする動作が発生する。取りたいものがすぐに取り出せず、必要なものを取るために別のものを横に動かし、そして必要なものを取った後、動かしたものを再び元に戻すといった動作も発生する。これらは全て、本来は必要のないムダな動作だ。それだけではない。取り間違えたり見間違えたりといった作業のミスも増えて品質が悪化する可能性もある。さらに、こうした職場では安全も十分に確保できない。員数管理などの管理作業が増え、掃除の手間も増える。現場に置かれた「今は要らないもの」は、さまざまな問題を引き起こすのである。

 生産現場では、生産性や品質、安全を高めるために、徹底してものを減らす「無化思考」を持つべきである。「無化思考」とは、現場からものをなくせないか、なくすためにはどうすればよいかを考えることだ。

 「無化思考」の初級レベルでは、とにかく現場からものをなくしていこうと考えることが求められる。加工機の前に散乱している工具類を例にとると、「『今、要るもの』はどれか」を考え、そうでないものは目の前に置くことをやめる。今すぐ使うもの、あるいは1日に何度も使うものは「今、要るもの」なので、極力手近に置く。時々使うものは、目の前にはなくてもよいけれど作業をする中でできる限り便利な所に置く。年に1回使うか使わないかというものや、何かあったときにしか使わないものは、場所に余裕がなければ、最悪の場合は工場の隅に置くのもやむを得ない、ということを考えなければならない。

 ステップアップして「無化思考」の上級レベルでは、ものをなくすために、何をすべきかを考えることが求められる。工具類の例で言うと、設備が故障するから工具が要るというのであれば、設備保全をきちんと実行し、故障の少ない状態にすれば工具も必要なくなるだろうというふうに考えるのである。現場に置かれた材料が多くて邪魔なのであれば、材料の供給タイミングや供給量などをサプライチェーン全体で最適化するための取り組みを行う。こうした改善を進めていけば、現場はシンプルで作業のしやすい職場に劇的に変わる。