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崩壊の顛末(てんまつ)

 生産の拡大を目的に新しく建設された工場がある。これをS工場と呼ぼう。S工場では立ち上げに伴い、新たに多くの作業者を雇用して活気に満ちたスタートを切った。工場長や管理者には優秀な若手メンバーが充てられた。従来の工場の古い慣習や固い考え方を一掃し、優秀な若手管理者がのびのびと工場を運営できるようにと、会社が挑戦的な配置を行ったのだ。

 既に他の職場で力量を認められていた若手管理者は、自分たちが良いと思うレイアウトや生産体制、指導法などを次々と実践し、工場の立ち上げは経営陣の予想以上に順調に進んだ。心配されていた初出荷に対するトラブルも発生せず、順調に生産がスタート。生産性や品質の指標も既存の工場と比べて見劣りすることはなかった。

(作成:日経 xTECH)
(作成:日経 xTECH)
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 だが、別の工場を任されているベテラン工場長がS工場を視察した時に、一抹の不安を覚えた。それは、新たに雇用された作業員のモラルについてだ。決して、仕事中に悪ふざけをしているわけではない。むしろ、とても真面目に仕事をしており、挨拶もきちんとしていた。不安に感じたのは、ポケットに手を突っ込んで廊下を歩いていたり、作業着を着崩していたり、工場の床に引かれた白線を平気で踏み付けていたりといった作業者の行動や態度だった。つまり、工場として守るべき約束事をきちんと守っていないことと、それに対して工場長以下の管理者が適切に注意していないことが、ベテラン工場長を不安にさせたのである。

 そして、残念ながらベテラン工場長の不安は的中した。作業者は徐々にルールを軽視し、現場の異常にも気に留めないようになった。しばらくすると現場は荒れ、S工場の生産性や品質といった成果指標は悪化の一途をたどっていった。

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