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崩壊の顛末(てんまつ)

 数多くの機械装置を使って製品を生産している工場がある。これをZ工場と呼ぼう。いわゆる設備産業であるZ工場では大小さまざまな機械装置を使っており、過去には怪我(けが)などの労働災害が発生したことがあった。そのため、Z工場では「安全第一」を標榜し、職場の随所に安全を啓蒙する看板を掲示して、従業員に対する定期的な安全教育や管理・監督者に向けた階層別の安全教育などを実施していた。

 経営陣には過去に労働災害に直面した人もおり、職場の「完全ゼロ災害」を何とか実現しようと、安全に対する意識向上の取り組みを熱心に行っていた。しかし、完全ゼロ災害はなかなか難しい状態にあった。

(作成:日経クロステック)
(作成:日経クロステック)
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 ある時、製造担当の常務による工場視察で問題が発生した。工場視察の当日、あらかじめ準備した経路を案内しながら、途中まではつつがなく進んでいた。しかし、製造に造詣の深い常務は、決められたルートを視察することに不満を持った。そこで、工場長はルートを外れ、視察の予定がなかった製造設備の前に向かった。すると、大きなローラーが回転している設備に作業者が手を突っ込んで微調整を行っている姿を目撃した。

 常務はすぐに作業者に駆け寄り、周囲の安全を確認して「すぐに設備から手を出しなさい!」と注意した。工場長もすぐに駆け寄ってきたが、事態を把握できていないようだった。常務は「この工場では、機械を動かしながら作業者に調整作業をさせているのか」と工場長を激しく叱責した。

 いつの間にか、Z工場では安全意識が欠如していた。そのため、設備に備え付けられている安全装置を解除して作業するのが普通になっていた。結果、幸いなことに休業災害など大きな災害には至らないものの、不休災害や赤チン災害(指を少し切る程度の軽微な災害は「赤チンでも塗っておけ」という意味でこう呼ばれる)が多発する工場になってしまっていた。

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