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崩壊の顛末(てんまつ)

 国内に数カ所の生産拠点を持ち、数多くの機器を生産している企業グループがある。その企業グループにおいて生産活動の中心となる工場、これをE工場と呼ぼう。昨年までこの工場で製造課長を務めていたA氏は、今は本社に移り、営業部門で部長職に就いている。A氏は製造畑が長く、生産工場で管理者をしていた頃には、本社にある営業部門の情報連絡の悪さや、仕事のルールを無視したご都合主義的な対応姿勢に非常に不満を持っていた。そのため、頻繁に営業部門と衝突していた。A氏はその気性の激しさから、営業部門から「暴れん坊」という不名誉なあだ名をつけられていた。一方で生産工場の中では、自分たちの思いを代弁してくれる存在だと作業者から人望を集めていた。

 ところが、A氏が製造部門から営業部門に異動になると、突然態度が大きく変わってしまった。事あるごとに、製造部門の融通の利かない仕事のやり方や、営業部門からの協力要請に対する顧客を理由とした非協力的な姿勢などを攻撃し始めたのだ。

(作成:日経 xTECH)
(作成:日経 xTECH)
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 ある時、大きな自然災害が発生して、主要製品の部品供給がストップしてしまう事態が発生した。サプライチェーン(部品供給網)の寸断で生産活動が止まってしまった一方で、顧客からは製品の供給を強く望まれていた。当然ながら、生産工場に付随する調達部門や生産技術部門、品質保証部門、生産部門まで、総力を挙げて供給元への復旧支援を実施。同時に、代替品の探索や評価など、考え得る危機対応に全力で取り組んでいた。しかし、調達の寸断は複数の部品に及び、物流の混乱も相まって、顧客の要望に十分に応えられない状態が続いていた。

 ここにかみついたのが、A氏だ。「緊急事態だというのに、社内の手続きが多すぎる」「BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)が不完全で役に立たない」といった辛辣な言葉で、生産工場の不備を日々責め立てて、対応を急がせるのだ。そもそも、現在の業務プロセスやBCPの基本的な部分は、A氏が在任中に指揮を執って出来上がったものだ。生産工場からは「おまえが言うか?」と猛反発を受けることとなり、互いの部門の関係は、まともに議論が成立しないほど険悪なものとなってしまった。