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コンサルの眼

 「おまえも以前はここにいただろ!」「どの口がそんなことを言うんだ」と周囲から恨み節が聞こえてくるような状況は、誰しも少なからず経験したことがあるのではないだろうか。事例のように、自分の立場によって発言を変えることをポジショントーク(立場トーク)と呼ぶ。

 自分に課せられたミッションを遂行するために、それぞれの部門が、その部門なりの主張を展開することは当然だ。生産工場は生産性や原価など、自らが達成しなければならない目標の達成のためにさまざまな主張を行う。それは他の部門も同様で、例えば営業部門では売り上げや利益の最大化に向けていろいろと主張する。各部門の管理者は、部門のミッションの遂行するために、自部門の主張(ポジショントーク)を繰り広げる。そういう意味で、ポジショントークを「悪」だと決めつけるつもりはない。

 しかし、その一方で、上位の管理者になるほどポジショントークは自部門の利益の最大化を狙った「部分最適」の象徴になる危険性があることを認識しておかなければならない。

 「立場が変わると言うことが変わる」というのも、時には必要だ。しかしそれが、会社全体へ貢献するための主張、すなわち「全体最適」なのか、それとも部門の代弁者として自部門だけを考えての主張、すなわち「部分最適」なのかによって、組織の捉え方は変わってくる。

 例えば、異動しても同じ建物や同じフロアで働いている場合、立場が変わったからといって手のひらを返したような発言はしにくい。ご都合主義的な言動に対しては、直接、多くの人(近くにいる以前の仲間)から冷たい視線を向けられるからだ。しかし、別の建物や拠点で働くようになると、直接冷たい視線を浴びせられることは少ないため、ポジショントークがやりやすくなる。手のひらを返した発言をしても、怒りや軽蔑の視線を向ける人がいないからだ。同じ理由で、直接会わない会議や電話、メールなどでもポジショントークは行いやすい。

 ポジショントークを行う場合は、受け手側がそれを「全体最適の表れ」と捉えるか、「部分最適の押し付け」と捉えるかにかかっている。相手の立場に対する想像力の有無がポジショントークの鍵となる。まず相手の立場を理解した上で、それでも全体の視点からら考えると、自分の主張を受け入れるべきだというスタンスが必要だ。

 今後はリモートワークが増える。Web経由の会話では、仕事相手の顔色や雰囲気などがつかみにくい。よく言われるように、非対面型のコミュニケーションでは感情が読み取り難くなるため、本人の意思以上にきつい表現になってしまいがちだ。アフターコロナの時代だからこそ、相手の考えや状況を意識して理解するように努め、それを踏まえた上でのポジショントークを活用するように注意を払うべきだろう。

(作成:筆者)
(作成:筆者)
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