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コンサルの眼

 このH工場の問題点を考えてみよう。前任の工場長のA氏の時代に、H工場では生産計画を立て、その遂行状況をモニタリングして、生産計画と生産実績との乖離の原因を日々現場で議論する習慣が出来上がっていた。ところが、後任の工場長のB氏の目には、粛々と生産計画を実行している普通の工場としか映らなかった

 生産計画と生産実績のズレに対する現場の日々の取り組み、すなわち、作業者同士の密なコミュニケーションや問題解決は、現場の実務に落とし込まれていた。そのため、B氏には実態を認識できなかったのだ。これはB氏が、A氏が実施した活動の主旨を理解していなかったことが問題といえるだろう。

(作成:筆者)
(作成:筆者)
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 生産計画が達成されなかった場合、H工場の現場はB氏から「とにかく何とかしろ」と頭ごなしに強く叱責される。それを恐れ、作業者は萎縮してムリをしてでも生産計画の達成を目指そうとする。A氏が工場長だった時代には、計画の未達をどうすれば改善できるかを自由闊達(かったつ)に議論する雰囲気があったが、その良い習慣は消えた。今では生産計画の数字を守ることにしか目が向かなくなっている。

 こうした状態のH工場で発覚したのが品質不正問題だ。顧客からのクレームで、H工場の現場がとんでもない事態を引き起こしていることが判明。納品されたものの中に、特性が規格値を外れた製品が大量に混じっていたのである。調査を行った結果、原因は設備の不調で特性値のばらつきが大きくなったことにあった。

 ところが、「計画の遅れは許されない」というプレッシャーから、「実際の使用には問題がないレベル」と現場が勝手に判断。特性が規格値から微妙に外れた程度の製品は黙って出荷していることが発覚した。