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崩壊の顛末(てんまつ)

 現場の改善活動に強い意欲を持つ工場がある。これをO工場と呼ぼう。このO工場は、顧客からの厳しい品質要求や、競合他社との苛烈な販売合戦といった背景から、生産現場での生産性や品質の改善を強く求められていた。

 これを受けて、工場長は現場の作業性の向上や、作業ミスの防止を狙った現場の改善活動を推進しようと決断した。5S活動を中心とした改善活動は以前から行っていたが、各現場が思い思いに実施しており、適切な改善活動はできていなかった。そのため、現場の至る所に物があって作業性が阻害されていたり、現場に物が散乱していて取り間違いなどのミスが発生したりしていたのだ。

 こうした問題を解消すべく、工場長は改めて工場全体で5S活動を進めてQCD(品質、コスト、納期)の改善に取り組むことにした。現場は当初、「5S活動など既にやっている」という意識が強くて反発した。それでも、工場長の地道な説得により、現場も納得して改善活動がスタートした。

(作成:日経クロステック)
(作成:日経クロステック)
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 工場長が特に力を入れたのは、改善活動の基本である「整理」と「整頓」だ。ところが、活動を進めても整理できない。一向に物が減らないのだ。工場長が物が減らない理由を聞くと、現場の担当者はこう答えた。「生産計画が頻繁に変わるため、必要な工具もすぐに変わります。そのため、この職場は例外で、ここにある工具は全て私の周りに必要なのです」と。工場長も「そういう事情があるなら仕方がない」と考え、それ以上は追及しなかった。

 一方の整頓では、特に「3定(定位置、定品、定量)」を強く推し進めた。だが、ここでも問題が発生した。せっかく置く場所を決めても、「駐車違反(決められた場所以外にモノが置かれていること)」が頻発するのだ。その理由を工場長が尋ねると、現場の担当者は悪びれることもなく、「これは例外です。仕方なく駐車違反をしているのです」と言うのだった。工場長も「そういう事情があるなら仕方がない」と、ここでもそれ以上追及しなかった。

 結果、O工場ではルール違反を誰も問題視しなくなり、それをきっかけにさまざまなトラブルが頻発するようになってしまった。