日本航空(JAL)が2017年11月に稼働させたクラウドベースの旅客系基幹システム。稼働から1年が経過し、その威力が明らかになってきた。
JALは予約や発券などの機能を担う旅客系基幹システムについて、1967年から米IBM製のメインフレームで50年間稼働させてきた「JALCOM」を、2017年11月からスペインのアマデウスITグループ(Amadeus IT Group)が提供する旅客系クラウドサービス「Altea(アルテア)」にリプレースした。JALは新システムに、800億円と7年を費やした。
「切り替えによる増収効果は、2018年4~9月の半年間で国際線が最大90億円、国内線が同40億円、合計で同130億円に上る。国際線の座席利用率は過去最高で単価も6.2%上昇した。新システムの導入効果もこれらに大いに寄与した」――。2018年10月31日の2018年4~9月期決算会見で、JALの斉藤典和専務執行役員はこう語り、顔をほころばせた。
新システムの「レベニューマネジメント」が増収に貢献
国際線で大きな増収効果が得られたのは、新システム導入によりJALの海外向けWebサイトでWeb販売機能が拡充された効果が大きい。「多言語対応や予約クラスの選択機能などが充実したため、海外から日本に訪れるインバウンドの売上高が2018年4~9月に前年同期比で52%増えた」。JALCOMからAlteaへの刷新プロジェクトに中核メンバーの1人として携わり、現在は旅客系システム開発の担当部門である旅客システム推進部の部長を務める杉原均氏はこう証言する。
新システムで「レベニューマネジメント」の機能が大幅に強化されたこともプラスに働いている。観光客向けの早期購入割引運賃や、出張客向けの手数料なしで自由に予約を変更できる普通運賃など、運賃種別ごとに販売する席数を調節して売上高が最大になるようにする機能だ。
国際線の場合、運賃のパターンは無数にある。日本から海外に行く旅客、海外から日本に来る旅客に加え、例えばオーストラリアから日本を経由して英国へ向かうといった「日本通過運賃」の旅客もいるからだ。これに対し、旧システムは個々の便ごとに予約クラスと席数数を最適化する機能しかなかった。JALの場合、旧システムでは相対的に運賃の安い日本通過運賃に席数を多く割り当てる傾向があったという。