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 CPUやGPUと並び、スマートフォンの性能を左右する第3のプロセッサーに躍り出たのが「NPU(Neural Processing Unit)」。米アップル(Apple)のiPhoneは2017年からNPUを顔認識や撮影画像のアニメーション処理などに利用している。

 モバイル向けのNPUは、人間の脳を模した機械学習の一種であるニューラルネットワークを多層化した深層学習において、学習結果を基にした「推論」処理を高速に実行するプロセッサーを指す。例えば学習データを基に適切な画像処理を判断してくれる、いわゆるAI処理を担う。

米アップルのSoC「A12 Bionic」のNPUを使った画像処理
米アップルのSoC「A12 Bionic」のNPUを使った画像処理
顔認識より後の処理を担う(出所:米アップル)
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 深層学習は、2012年ごろから主に画像処理の領域で爆発的に普及し始めた。スマートフォンの新トレンドとしてNPUが目立ち始めたのは、2017年秋からだ。

 まず中国の華為技術(ファーウェイ)傘下のハイシリコンテクノロジーズ(HiSilicon Technologies)が、2017年9月2日にドイツの総合見本市「IFA 2017」で発表したSoC「Kirin 970」に「Mobile AI Computing NPU」を搭載した。CPU比で25倍の演算性能と50倍の電力効率を持ち、性能の指標は1.92TFLOPSとしている。最初に搭載したスマートフォンは「HUAWEI Mate 10」シリーズである。

 この10日後の2017年9月12日(米国時間)、アップルはA11搭載のiPhone 8/8 Plus/Xを発表した。

米アップルは2017年のA11 BionicでNPUを新設
米アップルは2017年のA11 BionicでNPUを新設
2018年9月発表のiPhone 8/8 Plus/Xに搭載した(出所:米アップル)
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 こちらは「Neural Engine」をデュアルコアで搭載し、合計性能は600Mオペレーション/秒(Ops)との説明である。Kirin 970のFLOPSと単位が一致しないが、Kirin 970は16ビット浮動小数点演算を毎秒1兆9200億回実行可能なのに対し、A11は何らかの命令(整数か浮動小数点かは非公開)を2コアで毎秒6000億回実行可能としている。