2021年2月3日、東京・六本木にある国立新美術館で「佐藤可士和展」が開幕した。日本を代表するクリエーティブディレクターであるSAMURAI(サムライ、東京・渋谷)の佐藤可士和氏による仕事ぶりを紹介する、過去最大規模の個展だ。会期は同年5月10日まで。
佐藤氏の活動は、デザインやアートディレクション、ブランディングなど多岐にわたる。クライアントの多くは日本を代表する企業ばかりだ。近年は建築分野のデザイン監修といった仕事が急増しており、展覧会では建築関連の展示に大きなスペースを割いている。
建築だけでも、ユニクロや都市再生機構(UR都市機構)、くら寿司、千里リハビリテーション病院(大阪府箕面市)、武田薬品工業など、業種業態が異なる企業の展示がずらりと並ぶ。模型は少なく、パネルでの紹介が多いが、全国に広がる佐藤氏の仕事を俯瞰(ふかん)できる絶好のチャンスといえる。
その中には、建築物や内装の意匠が登録されたばかりのプロジェクトも含まれている。デザイナーだけでなく、建築関係者も見ておいて損はない展覧会といえそうだ。
建設業界に佐藤氏の名がとどろいたプロジェクトとして知られるのが、東京・立川市の「ふじようちえん」である。その展示もある。
幼稚園のリニューアルをプロデュースし、屋根の上を子どもたちが走り回れる楕円形の園舎を佐藤氏は提案した。様々な幼稚園を見て回り、四角い建物の周りに遊具を配置するという典型的な幼稚園の在り方に「自由さが足りないのでは」と疑問を感じたという。
そこから発想を膨らませ、ふじようちえんのコンセプトを「園舎自体が巨大な遊具」とした。園舎そのものがアイコンになることも狙った。そして今では、日本有数の人気幼稚園になっている。建物の設計は、手塚建築研究所(東京・世田谷)が手掛けた。
佐藤氏といえば、ユニクロのブランディングやアートディレクションを長く務めていることでも知られる。店舗デザインにも深く関わっている。
20年4月に横浜で開業した公園型店舗「UNIQLO PARK 横浜ベイサイド店」は記憶に新しい。佐藤氏と建築家の藤本壮介氏がタッグを組んだ、ユニクロの店舗開発の第2弾だ。約10年前には大阪のグローバル旗艦店「ユニクロ 心斎橋店」で、真っ白いファサードの店舗を一緒につくった実績がある。
藤本氏は20年末に日経アーキテクチュアの取材に応じた際、UNIQLO PARKの模型を見ながら裏話を明かしている。「屋根が階段状になっている模型を可士和さんに見てもらったとき、これが滑り台だったら面白いよね」と指摘され、パッと道が開けたという。
藤本氏は、斜めの屋根に滑り台などの遊具を設けた店舗デザインを監修。UNIQLO PARKを「訪れる目的になる郊外店」に仕立てた。ファーストリテイリングの柳井正社長は一目で、公園型店舗を気に入ったという。
UNIQLO PARKは商業用建築物として初めて、20年11月に意匠登録されたことが注目に値する。外観のユニークさが際立つ建物というわけだ。