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カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC、東京・渋谷)は2023年3月1日、長野県軽井沢町に地域交流を目的としたコミュニティー施設「Karuizawa Commongrounds(軽井沢コモングラウンズ)」を開業した。約3500坪ある敷地に、本屋やカフェ、食堂、物販などの店舗が点在する複合施設になっている。オープン直後から大勢の人が訪れている。
敷地の高台に立つ「Karuizawa Commongrounds(軽井沢コモングラウンズ)」の中核施設(書店棟)(写真:日経クロステック)
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施設の中核となるのが、敷地の高台に立つ書店棟だ。CCCが運営する本屋「軽井沢書店 中軽井沢店」と、カフェ「SHOZO COFFEE STORE」、コワーキングスペースが入居する。CCCは軽井沢で同社の主力店舗「蔦屋書店」ではなく、地元限定の軽井沢書店を運営してきた実績がある。軽井沢で唯一の本屋だ。今回の店舗は、その2店目になる。
書店棟は中央部から四方に広がる大屋根が特徴だ。建物はスカートをはいた人のような断面形状をしている。CCCの本屋「軽井沢書店 中軽井沢店」とカフェ「SHOZO COFFEE STORE」、コワーキングスペースから成る(写真:日経クロステック)
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書店棟の入り口。軒が深い(写真:日経クロステック)
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入り口右手の大きくカーブする軒下空間。デッキで日なたぼっこや森林浴ができる(写真:日経クロステック)
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書店棟の建築的な特徴は、以前からこの場所に立っていた木造2階建ての施設を増築改修したことだ。青山学院女子短期大学の合宿施設をCCCが敷地と共に買い取り、書店棟を中核とするKaruizawa Commongroundsを新たに設けた。
敷地には軽井沢らしい木々が立ち並び、かつては森の中に施設があるような感じだったという。新たなランドスケープは今後数年かけてゆっくり整備していく計画だといい、木々はできるだけ切らない。
敷地面積は約4200m2。そこに立つ書店棟の延べ面積は約500m2と非常にコンパクトである。ゆとりのある土地の使い方をして、敷地内に自然を残している。
Karuizawa Commongroundsは軽井沢を訪れる観光客がターゲットではない。近隣に住む人たちや別荘族が気軽に集まれる場づくりを目指している。あえて建物の規模を抑え、テナント数も限定し、小さな店舗が寄り集まる集落のような配置にしている。看板は目立たないように付けているほどだ。
Karuizawa Commongroundsの全体像(写真:Klein Dytham architecture)
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軽井沢の駅前に立ち並ぶアウトレットモールや大型レストラン、娯楽施設、そしてホテルなどは一切ない。
トレーラーハウスの車体に軽井沢書店と書かれているが、建物には大きな看板が見当たらない(写真:日経クロステック)
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3次元曲面の大屋根は板金施工が難しく、点群データや3Dスキャンを駆使して細部を納めた(写真:Klein Dytham architecture)
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1階は全周ガラス張りで、外から人けを感じられる(写真:日経クロステック)
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書店棟の改修設計はクライン ダイサム アーキテクツ(東京・渋谷)、施工は笹沢建設(長野県軽井沢町)がそれぞれ手掛けている。書店棟の高さは、約7.4m。増築後も階数は、地上2階建て。2階屋根の南側には、太陽光発電パネルを載せている。
合宿施設だった既存の建物は築58年で、木造躯体(くたい)を除いて全て解体した。古い図面は残っていたが、「実際に解体してみないと分からないことが多かった。柱と梁(はり)の状態は良かったので、そのまま構造の一部とした。味のある古い柱梁は現しとし、内装の大部分を占める書店の本棚も木製のシンプルなつくりで統一した」(クライン ダイサム アーキテクツの久山幸成氏)。
青山学院女子短期大学の合宿施設だった建物。木造2階建てで、周囲は森に囲まれていた(写真:Klein Dytham architecture)
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木造躯体(くたい)以外は全て解体し、スケルトン状態にした。木材の状態は非常に良かった(写真:Klein Dytham architecture)
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施工中の書店棟を上空から見た様子。中央に木造の既存躯体を残し、その周りに四方に手足を伸ばすかのように大屋根を架けた。真上から見ると、動物の皮を丸ごと剥いでつくる敷物のような平面をしている(写真:Klein Dytham architecture)
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新築した大屋根の木梁(はり)。3次元曲面を形成するため、複雑なパーツの組み合わせになっている。軒下は仕上げを現しにしたので、木梁がそのまま見える(写真:Klein Dytham architecture)
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完成した大屋根と取り付けた太陽光発電パネルを上空から見る(写真:Klein Dytham architecture)
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書店棟の夕景(写真:Klein Dytham architecture)
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