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 海越しに博多の夜景を望める国営海浜公園に、全30棟の宿泊施設や飲食施設、さまざまな観光体験のためのアクティビティー施設が誕生。三菱地所を代表とする民間事業者が整備し、「INN THE PARK 福岡(インザパーク福岡)」などとして2022年3月15日に開業した。

夜間の「INN THE PARK 福岡」。各室の照明により、テント膜を張った建物が浮かび上がる(写真:日経クロステック)
夜間の「INN THE PARK 福岡」。各室の照明により、テント膜を張った建物が浮かび上がる(写真:日経クロステック)
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隣接地に開業したアスレチックタワー最上部の高さ16.8mにある有料展望台からINN THE PARK 福岡および博多湾方向を見る。右手前はカモ池(写真:日経クロステック)
隣接地に開業したアスレチックタワー最上部の高さ16.8mにある有料展望台からINN THE PARK 福岡および博多湾方向を見る。右手前はカモ池(写真:日経クロステック)
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 国土交通省九州地方整備局がPark-PFI 制度(公募設置管理制度)を活用して進める公民連携事業で、整備・運営は海の中道パーク・ツーリズム共同事業体が担う。構成者は、三菱地所(代表企業)、積水ハウス、公園財団、インザパーク福岡の4者。このうちインザパーク福岡は、リノベーションや公民連携事業の施設に実績を持ち、馬場正尊氏が代表を務める建築設計事務所のオープン・エー(東京・中央)が設立に関与した新会社で、宿泊、飲食、温浴施設の運営を担当する。

 福岡市東区にある海の中道海浜公園の「光と風の広場」に立地する。同広場のリニューアルとして国が進めたもので、「パークツーリズム」をコンセプトに、「憩う」「学ぶ」「遊ぶ」 を体験できる滞在型レクリエーション拠点を整備した。

 「パークツーリズム」とは、公園そのものが旅の目的地となるような観光の在り方を指す。滞在環境として高いポテンシャルを持つロケーションの公園を拠点化し、観光体験や文化的交流によってエリア全体の魅力を上げる。今回、新たに宿泊、飲食、温浴機能を持つ「INN THE PARK 福岡」の他、巨大アスレチックタワー「シ―・ドラグーン」やホーストレッキング用の厩(きゅう)舎などを整備している。

立地する「光と風の広場」を特徴付けるカモ池側から見る(写真:日経クロステック)
立地する「光と風の広場」を特徴付けるカモ池側から見る(写真:日経クロステック)
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カモ池越しの夜景。左奥はアスレチックタワー「シー・ドラグーン」(写真:日経クロステック)
カモ池越しの夜景。左奥はアスレチックタワー「シー・ドラグーン」(写真:日経クロステック)
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海の中道海浜公園の立地。1981年開園の国営公園で、博多湾と玄界灘に囲まれた砂州状の地形「海の中道」に位置する。東西に約6km、面積約350万m<sup>2</sup>と広大な敷地を有する。福岡市中心部からは車で約25分(資料:海の中道パーク・ツーリズム共同事業体)
海の中道海浜公園の立地。1981年開園の国営公園で、博多湾と玄界灘に囲まれた砂州状の地形「海の中道」に位置する。東西に約6km、面積約350万m2と広大な敷地を有する。福岡市中心部からは車で約25分(資料:海の中道パーク・ツーリズム共同事業体)
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 宿泊部分は、 「泊まれる公園」をコンセプトとする公園一体型宿泊施設「INN THE PARK」シリーズの第2弾。静岡県沼津市の青少年向け自然体験施設の跡地に17年に開業した「INN THE PARK 沼津」の成功を踏まえている。都市公園等コンクール国土交通大臣賞を受賞した沼津の施設は、オープン・エーが中心となって手掛けたものだが、規模の大きくなる今回は、三菱地所などと共同している。

 沼津市のプロジェクトを印象付けたのは、工作物として宙につるなどした直径3.5m、定員2人の「球体テント」だった。これを直径6mに大型化し、福岡市との協議で建築基準法にのっとる骨組膜構造の建築物として13棟建設した。既存施設があるため、確認申請上は増築として扱っている。

球体テント。テントハウスの設計・製造・販売を手掛けるもちひこ(静岡市)が協力している。なお、つり型と置き型がある沼津では、正三角形の骨組みを組み合わせるジオテック構造により、球状およびドーム状の工作物を設けている(写真:日経クロステック)
球体テント。テントハウスの設計・製造・販売を手掛けるもちひこ(静岡市)が協力している。なお、つり型と置き型がある沼津では、正三角形の骨組みを組み合わせるジオテック構造により、球状およびドーム状の工作物を設けている(写真:日経クロステック)
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海の中道海浜公園「光と風の広場」周辺の案内図。園内西側には、屋外プールや動物園、水族館、野外劇場などがある。周辺地域と連携し、観光体験や訪問者間の交流によって公園全体および周辺地域の活性化を図る(資料:海の中道パーク・ツーリズム共同事業体)
海の中道海浜公園「光と風の広場」周辺の案内図。園内西側には、屋外プールや動物園、水族館、野外劇場などがある。周辺地域と連携し、観光体験や訪問者間の交流によって公園全体および周辺地域の活性化を図る(資料:海の中道パーク・ツーリズム共同事業体)
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球体テントのアプローチ側(写真:日経クロステック)
球体テントのアプローチ側(写真:日経クロステック)
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4タイプの宿泊施設・全30棟が園内に並ぶ

 今回の事業は、公園管理者である国土交通省九州地方整備局が、19年3月に「官民連携による魅力向上推進方針」を策定したところから始まる。全体では年間200万人規模が利用する公園ながら、対象となった地区は利用者が集中する西側から少し離れているために不活性化し、「利用促進が不可欠」とされていた。

 国は19年8月、Park-PFI制度の活用で滞在型レクリエーション拠点を整備・運営する「海の中道海浜公園官民連携推進事業」の事業者を公募。20年1月に三菱地所を代表企業とする4社から成る共同事業体を選定し、21年5月に公募設置等計画(事業計画)を認定している。同7月に着工、22年3月に開業に至った。41年1月まで運営し、同5月に土地を更地返還する契約となっている。

 Park-PFI制度の下では、民間事業者が公募対象公園施設を設置し、設置管理許可面積に応じて管理者に使用料を支払う。その収益は、一般の公園利用者のための特定公園施設の整備や改修に充当される。国営公園におけるPark-PFI事業としては他に「淡路島国営明石海峡公園」が公募・認定済みだが、開業は海の中道海浜公園が第1号となった。

 宿泊施設は4タイプ、全30棟から成る。宿泊料金は、夕食・朝食付きで1人2万円から4万円程度に設定されている。

 2人から4人用の球体テントは広さ約28m2、全13棟ある。直径6mで、2階建ての建物ほどの高さを持つ。

球体テントの窓を見上げる(写真:日経クロステック)
球体テントの窓を見上げる(写真:日経クロステック)
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球体テントの扉を見る。ファスナーで開閉し、下部の留め金に南京錠で施錠する(写真:日経クロステック)
球体テントの扉を見る。ファスナーで開閉し、下部の留め金に南京錠で施錠する(写真:日経クロステック)
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球体テントの扉を室内から見る(写真:日経クロステック)
球体テントの扉を室内から見る(写真:日経クロステック)
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骨組膜構造による球体テント内観(写真:日経クロステック)
骨組膜構造による球体テント内観(写真:日経クロステック)
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球体テント内観。上方を見る(写真:日経クロステック)
球体テント内観。上方を見る(写真:日経クロステック)
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球体テント内観。開口部周りを見る。カーテンはマグネットで骨組みに留めている(写真:日経クロステック)
球体テント内観。開口部周りを見る。カーテンはマグネットで骨組みに留めている(写真:日経クロステック)
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球体テント内観。床置き式のエアコン、冷蔵庫を設置。洗面・トイレは共用のサニタリー棟を利用する(写真:日経クロステック)
球体テント内観。床置き式のエアコン、冷蔵庫を設置。洗面・トイレは共用のサニタリー棟を利用する(写真:日経クロステック)
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 2人から8人用のグランピング施設は4月から11月が利用期間で広さ約82m2、全12棟ある。直径17mのタープテントの下に、さらにテントを2つ設置。暖炉のあるアウトドアリビングや部屋食を楽しむためのダイニングを備える。

博多湾に面するグランピングエリア(写真:日経クロステック)
博多湾に面するグランピングエリア(写真:日経クロステック)
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グランピングエリアのテントを見る(写真:日経クロステック)
グランピングエリアのテントを見る(写真:日経クロステック)
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布状のタープテント内から博多湾を見る(写真:日経クロステック)
布状のタープテント内から博多湾を見る(写真:日経クロステック)
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