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半屋外空間で脱「ハコモノ」を目指す

 ターミナルの特徴は、屋根の下に並べた箱状の空間だ。それぞれの箱には、フェリーの待合室や券売所、地元の特産品を扱う物販コーナー、観光案内所、イベントスペースなどが入る。

北側を見る。左手1階に観光案内所、右手に切符売り場がある(写真:阿野 太一)
北側を見る。左手1階に観光案内所、右手に切符売り場がある(写真:阿野 太一)
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 設計者の乾久美子建築設計事務所は、16年8月に県が実施したプロポーザルで選ばれた。デザインの過程では、廿日市市が16年3月に作成した「宮島口地区まちづくりグランドデザイン」に沿って景観などを検討した。乾久美子主宰は、箱を設けて入れ子状の構造にした理由を次のように説明する。

 「いわゆる“ハコモノ”建築は人を室内に囲い込んで、街から切り離す。ここでは屋根の下に箱を並べて、箱と箱の隙間を半屋外の空間とした。そのため外にすぐ出られて、街ともつながりやすい。そうした人の囲い込みをしないターミナルを目指した」

 周辺地域に開くだけでなく、一体感を生み出すことにもこだわった。例えば箱のスケールは、ターミナル近くにある商店に合わせている。ターミナル、桟橋、広島電鉄・宮島口駅の屋根や庇(ひさし)の勾配、素材に関連性を持たせて、“屋根のあつまり”をつくることで宮島口全体に一体感を生み出す狙いだ。

宮島口の将来イメージ。設計した乾氏は、屋根や庇の勾配、素材に関連性を持たせて、“屋根のあつまり”で地域全体がつながることを提案した(資料:乾久美子建築設計事務所)
宮島口の将来イメージ。設計した乾氏は、屋根や庇の勾配、素材に関連性を持たせて、“屋根のあつまり”で地域全体がつながることを提案した(資料:乾久美子建築設計事務所)
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 宮島とのつながりを意識して、デザインは「和」を基調とした。天井や壁の一部は、県産のスギ板張りで仕上げた。大屋根は、厳島神社の屋根勾配に合わせて設計した。コンクリート平板の床は、ざらつきのある仕上げにすることで、うるおいと落ち着きのある質感を表現している。

 一方、ターミナルの北西側で工事が進む商業施設「エット」は、広島電鉄が発注者だ。鉄骨造、2階建てで、延べ面積は1600m2。県内に本社を置く企業を中心に16 店舗で構成する。乾久美子建築設計事務所の設計により、ターミナルと一体で開発。構造的には分かれるが、建築基準法上は1棟となる。

【建築概要】
■所在地:広島県廿日市市宮島口1-11-1
■主用途:旅客ターミナル
■敷地面積:1万1685.52m2(そのうち旅客ターミナル建設敷地:4968.80m2)
■建築面積:2637.63m2
■延べ面積:2174.39m2
■構造:鉄骨造
■階数:地上2階
■発注者:広島県
■設計者:乾久美子建築設計事務所
■設計協力者:小西泰孝建築構造設計(構造)、森村設計(設備)、シリウスライティングオフィス(屋外照明)、大光電機 TACT(屋内照明)、菊地敦己事務所(サイン)
■施工者:広成建設・広電建設JV(建築)、大新電工(電気)、天満冷凍機(機械)、日本オーチス・エレベータ(昇降機)
■設計期間:2016年10月~18年3月
■施工期間:2018年10月~20年2月
■総工費:約24億円