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 日本代表のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)優勝からわずか8日後の2023年3月30日。プロ野球開幕とともに「北海道ボールパークFビレッジ」が開業を迎える。北海道日本ハムファイターズの新球場「エスコンフィールドHOKKAIDO」を中核施設とする敷地面積約32万m2の巨大複合施設だ。ファイターズスポーツ&エンターテイメント(北海道北広島市)が掲げる来場目標は年間300万人以上。ファイターズが22年に動員した観客数は約129万人であり、単純計算で、新規ファンの獲得や試合のない日の集客によって170万人以上を集める必要がある。同社の三谷仁志取締役にFビレッジで描く球場ビジネスを聞いた(星野 拓美=日経クロステック/日経アーキテクチュア)

ファイターズスポーツ&エンターテイメントの三谷仁志取締役。事業統轄副本部長を務める(写真:日経クロステック)
ファイターズスポーツ&エンターテイメントの三谷仁志取締役。事業統轄副本部長を務める(写真:日経クロステック)
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新球場の見どころを教えてください。

 たくさんありますが、1つは座席の位置によって、その場所ならではの観戦を楽しめるところです。一般的に球場の観客席は、フィールドに近いほど価値が高くなります。ホームベース付近に「価値の基準点」があり、そこから離れるほど座席の価値が低くなる。これに対してエスコンフィールドでは「価値の基準点」を球場内に数多く、かつ立体的に配置し、フィールドとの近さとは異なる価値をつくり出しました。

レフト側外野席に建てた5階建て複合施設「TOWER 11(タワーイレブン)」や、バックスクリーンに設けたクラフトビール醸造レストランなどがその場所特有の付加価値になっているということですね。

 そうです。私が気に入っているのは大型ビジョンを正面から見られる3階席です。1階席に比べるとフィールドとの距離は遠くなりますが、大型ビジョンと音響の環境は球場内で最も良い。選手との距離が近いという意味でのライブ感とは、ひと味違ったライブ感を堪能できます。

大型ビジョンは1塁側と3塁側の各スタンドに設置している。サイズは国内最大級の横86m、縦16m。東京・国立競技場の大型ビジョンよりも大きい(写真:吉田 誠)
大型ビジョンは1塁側と3塁側の各スタンドに設置している。サイズは国内最大級の横86m、縦16m。東京・国立競技場の大型ビジョンよりも大きい(写真:吉田 誠)
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外観では切り妻形の開閉式屋根が目を引きます。プロ野球開幕後、どれくらいの頻度で開閉する想定でしょうか。

 頻繁に開閉することになると思います。天然芝を育てるためにはなるべく多くの自然光を採り入れた方がよい。試合がない時は屋根を開けておいて、試合が始まる数時間前に閉じるというようなオペレーションになると思います。

屋根の開閉には高額な費用がかかりそうですが、新球場の屋根を動かすのにかかる電気代は1回2万~3万円くらいと聞きました。観客1人当たり約1円で屋根を動かせる。

 そうなんですよ。開閉する前には落下物がないかどうか確認作業が必要ですが、開閉するのに大きな障壁があるわけではありません。自転車と同じで、普段から使っていないとさび付いてしまう。むしろ定期的に動かした方がいいんです。

屋根が閉まった新球場を北側上空から見る。屋根は約130mの距離をレールで移動する。開閉の切り替えにかかる時間は約25分だ。写真は竣工前に撮影したもの(写真:大林組)
屋根が閉まった新球場を北側上空から見る。屋根は約130mの距離をレールで移動する。開閉の切り替えにかかる時間は約25分だ。写真は竣工前に撮影したもの(写真:大林組)
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