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 2020年の道路法改正では、被災した自治体の要請を受けて地方道全般の災害復旧などに直轄の権限代行を適用できるようになった。20年の7月豪雨(令和2年7月豪雨)による災害からの復旧では、この権限代行を初めて利用している。対象は流失した10橋と約100kmの道路だ。複数の工事を同時並行で進めなければならないため、近隣住民への配慮が欠かせなかった。

熊本県内の球磨川沿いの直轄権限代行区間(資料:国土交通省九州地方整備局)
熊本県内の球磨川沿いの直轄権限代行区間(資料:国土交通省九州地方整備局)
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 熊本県内の球磨川沿いでは、多くの道路が崩壊した。ただ工事のために道路を全面通行止めにすると、近隣の集落に住む住民は大幅に迂回する必要が生じる。そこでJR九州との協議を経て、被災したJR肥薩線の線路の一部を道路の代わりに利用している

線路上に土を盛って舗装し、迂回路として使っている。2021年3月10日撮影(写真:日経クロステック)
線路上に土を盛って舗装し、迂回路として使っている。2021年3月10日撮影(写真:日経クロステック)
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 それでも、迂回路を設けられない箇所などでは、いまだに片側交互通行による規制が続く。また、もともと1車線しかない県道などではダンプトラックがひっきりなしに通ると、一般車両がなかなか進めない事態に陥る。

球磨川沿いの道路の通行状況。2021年3月23日撮影(写真:イクマ サトシ)
球磨川沿いの道路の通行状況。2021年3月23日撮影(写真:イクマ サトシ)
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 21年に入ると橋や道路の復旧だけでなく、出水期に向けて河床掘削などが本格化し、ダンプトラックの走行が次第に増加。それに伴い、慢性的な渋滞が発生し、近隣住民からの苦情が増えてきた。

 そこで国土交通省は21年2月、各工区の施工者が集まる安全協議会において、朝の通勤時間帯はダンプトラックの通行を減らすよう協力を要請した。午前9時までは、ダンプトラックを1つの工事につき4台までに制限。また午前9時以降も編隊を組むのは4台までに限定するなどして、地元の生活に配慮した。

球磨川沿いの道路には、今も至るところで崩壊した箇所が残る。写真は線路を迂回路として使っている区間。2021年3月10日撮影(写真:日経クロステック)
球磨川沿いの道路には、今も至るところで崩壊した箇所が残る。写真は線路を迂回路として使っている区間。2021年3月10日撮影(写真:日経クロステック)
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 「通勤・通学時間である午前8時~9時に最低何台のダンプトラックを走らせれば回るか、施工会社にヒアリングした」。国交省九州地方整備局八代復興出張所の平山絹一建設監督官は、こう振り返る。

建物の解体専門会社が橋の撤去

 大量の橋の撤去も大変だったようだ。「流失した大量の橋を同時に撤去するというのは、これまで事例がないのではないか」と、九州地整八代河川国道事務所八代復興出張所の徳田浩一郎所長は話す。

水害直後の鎌瀬橋(熊本県八代市)の流失状況。2020年7月21日撮影(写真:日経クロステック)
水害直後の鎌瀬橋(熊本県八代市)の流失状況。2020年7月21日撮影(写真:日経クロステック)
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 「橋梁メーカーなどは鋼橋の分解はできても、水圧でねじ曲がった橋の撤去の経験がない。そこで協力会社に建物の解体専門会社を入れて撤去を進めた」(徳田所長)

流された鎌瀬橋の一部。2021年3月10日撮影(写真:日経クロステック)
流された鎌瀬橋の一部。2021年3月10日撮影(写真:日経クロステック)
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 どのように応力が掛かっているか分からないため、切断した途端に応力が解放される恐れがある。そのため、慎重にやらざるを得なかった。「ICT(情報通信技術)などを駆使して3次元データを作製し、切断方法をシミュレーションしていた」と徳田所長は言う。

 川の真ん中まで流された桁の撤去では、アクセスするのも一苦労だった。台船を使ったり坂路を仮設したりと、現地の状況に合わせて工事を進めた。例えば、熊本県八代市にある坂本橋では、工事用道路を設けて国道から河川内へアクセスし、そこから台船を使って橋を撤去した。

熊本県八代市にある坂本橋の撤去工事の現場。河川内へ下りる工事用道路の撤去が始まっていた。2021年3月10日撮影(写真:日経クロステック)
熊本県八代市にある坂本橋の撤去工事の現場。河川内へ下りる工事用道路の撤去が始まっていた。2021年3月10日撮影(写真:日経クロステック)
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