プラン・ドゥ・シー(Plan・Do・See、東京・千代田)が運営する、任天堂の旧本社社屋を改修したホテル「丸福樓(まるふくろう)」が2022年4月1日に京都市下京区鍵屋町で開業する。丸福樓は約90年前の昭和初期に建てられた旧本社社屋を活用した既存棟と新築棟から成り、安藤忠雄氏が設計監修を手掛けた。任天堂の前身である山内任天堂は1947年、花札やかるた、トランプを製造・販売する丸福を設立。その社名をホテルの名称に含めた。
18室ある客室の広さは、33m2~79m2。宿泊料金(税込み)は、朝・夕食と飲み物、軽食を含む1室2人の利用で、1泊10万円から。既に宿泊予約は始まっている。
22年3月29~30日には、報道陣向けの内覧会やオープニングセレモニーが開かれた。テープカットはホテルエントランス前で実施。まずはホテルに生まれ変わった旧本社社屋の外観を見ていこう。
既存棟は、外壁のタイルや緑の瓦屋根が特徴の建物だ。山内任天堂時代に花札などを製造・販売する場所だっただけでなく、創業家が暮らす邸宅だったところでもある。丸福樓には、約90年前に完成した住居や倉庫の趣が随所に残っている。既存棟の床や階段、壁紙、ステンドグラス、暖炉、家具、照明、看板などからは、任天堂を創業した山内家の細部への強いこだわりが見て取れる。
事業者である山内家(山内万丈氏によるYamauchi-No.10 Family Office、山内克仁氏が代表を務める山内財団、資産管理会社である山内の総称とする)の要望で、「1930年に竣工した当時の建築様式や内装はできる限り残した」(山内万丈氏)。一方、新築棟は安藤建築の特徴であるコンクリートを使った、シンプルで居住性が高い空間にした。全ての客室で調度品が異なる。
ホテルは3つの建物で構成する。2棟は地上3階建ての「既存棟」、残りの1棟が地上4階建ての「新築棟」(既存棟の一部を解体・修復したうえで増築した建物)である。敷地面積は802m2、延べ面積は1716.08m2(既存棟が1180.60m2、新築棟が535.48m2)。構造はいずれも鉄筋コンクリート造だ。
既存棟の改修および新築棟の設計は安藤忠雄建築研究所(大阪市)とノム建築設計室(京都市)、施工は大林組がそれぞれ手掛けた。ホテルの運営はプラン・ドゥ・シーが行う。
設計監修した安藤氏は依頼を受けたとき、長年使われておらず老朽化していた建物を見て、「これは難しい」と思ったという。だが「任天堂の社名は世界中の人たちが知っている。任天堂が創業の地である京都から、過去から未来へ新しい挑戦を続けていくのは素晴らしいことだ」と考え、引き受けた。
提示したプランは2つの既存棟と新築棟を並べてつなぎ、創業当時の記憶を色濃く残しながらも快適に過ごせる場を創出するものだった。新旧の融合を掲げ、既存棟には手を加え過ぎないように意識したという。