都市再生特別地区の制度を用いる従来の大規模開発プロジェクトの多くは、建物のボリュームを大きくする容積率緩和を狙い、公共的な都市貢献を提案するものとなっていた。結果としてプロジェクトとしての独自性を発揮しきれていないと指摘し、運営などソフトとの連携の度合いを強める在り方を唱えているのが国際文化都市整備機構(FIACS)の面々だ。常務理事の松岡一久氏に、その考え方を解説してもらう。
「こうやって見ると、どこの開発計画なのか見分けがつきませんね……」
これは、2018年11月に実施した私たちの団体、FIACS(Foundation for the International Cities with Arts, Culture, and Soft Infrastructures:国際文化都市整備機構)特区部会の会合での、あるメンバーのつぶやきだ。
FIACSは、大手デベロッパーや建設会社、建築設計事務所などの開発系企業メンバーとエンターテインメント、出版、観光などのソフト系企業メンバー、合わせて約30社が一緒になって設立した一般社団法人で、「ソフト&ハード連携の次世代型都市開発」について協議・検討している。
国の施策である都市再生特別地区(特区)における従来の開発計画の多くは、「容積ボーナスを獲得するための公共貢献」と事業者が割り切ってしまい、前例を参考にして提案されてきた面があるのは否めない。その結果、複合される機能が、観光案内所や多機能ホール、インキュべーション施設などに定型化されていき、都内各所の開発計画に同じように盛り込まれてしまっている。それが改めて分かって、冒頭のコメントにつながったわけだ。
ますますソフト施策が重視される都市再生
東京都内の各所で現在も大規模都市開発が盛んに行われている。その多くが、都市再生特別措置法に基づく都市再生特区の枠組みを使い、公共貢献の提案と引き換えに容積ボーナスを獲得して事業を推進してきた。名目としては、東京都が掲げる「東京の国際競争力の強化への貢献」を競う格好になっている。
そうした開発計画については、大規模な歩行者デッキなどのハード施策を盛り込むプロジェクトがある一方、都心エリアでは都市基盤整備が一段落したので、産業支援などのソフト施策が重視される傾向にあると聞く。しかし、ソフト施策というのは、ハード整備と比較すると提案時と完成後の整備水準に乖離が起こりがちで、また運営を始めてからの継続性を失いがちなので、課題があると指摘されてきた領域だ。
さらに2017年には国交省が都市再生特区の運用の柔軟化を通知し、「公共貢献施設の用途の大括(くく)り化」を推奨している。社会経済情勢の変化に対応させやすくする狙いだが、それ故に、施策の継続的な評価の必要性がますます高まっている。