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 長崎県の東部に突き出した島原半島。半島中央部には、約30年前に大規模噴火を起こした雲仙・普賢岳がそびえ、観光資源として雲仙地獄や雲仙・小浜温泉が全国的に有名だ。この地で、観光・復興・サイクリングという3要素を組み合わせた新しいインフラツーリズムが始まったと聞いて2023年3月中旬、体験に訪れた。(文中の人物の肩書は全て2023年3月時点)

雲仙岳の立ち入り禁止区域を自転車で巡った。国土交通省九州地方整備局が企画した新しいインフラツーリズムだ(写真:氏家 加奈子)
雲仙岳の立ち入り禁止区域を自転車で巡った。国土交通省九州地方整備局が企画した新しいインフラツーリズムだ(写真:氏家 加奈子)
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 筆者の住む福岡市内から島原半島へは車で3時間強。ツアーの出発地である長崎県島原市は半島東側に位置し、有明海を渡る定期船やJR諫早駅に接続する島原鉄道など、車以外のアクセス手段も豊富だ。

 今回は、福岡市中心部にある西鉄福岡(天神)駅から、電車と船を使って向かった。西鉄大牟田駅、三池港(福岡県大牟田市)を経て、約50分の船旅で島原港に到着。待ち時間などを含めても全行程の所要時間は約2時間20分と意外に早く感じた。

三池港の乗船場。1908年開港の三池港はかつて、石炭の積み出し港としてにぎわい、世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の構成資産に登録されている(写真:氏家 加奈子)
三池港の乗船場。1908年開港の三池港はかつて、石炭の積み出し港としてにぎわい、世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」の構成資産に登録されている(写真:氏家 加奈子)
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船から見た雲仙岳の山並み(写真:氏家 加奈子)
船から見た雲仙岳の山並み(写真:氏家 加奈子)
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島原港の様子。三池港と結ぶ「しまばら丸」の他、熊本港への定期船も発着する。島原港ターミナル内に観光案内所(右の写真)がある(写真:氏家 加奈子)
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島原港の様子。三池港と結ぶ「しまばら丸」の他、熊本港への定期船も発着する。島原港ターミナル内に観光案内所(右の写真)がある(写真:氏家 加奈子)
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島原港の様子。三池港と結ぶ「しまばら丸」の他、熊本港への定期船も発着する。島原港ターミナル内に観光案内所(右の写真)がある(写真:氏家 加奈子)

 今回のインフラツアーでは、雲仙・普賢岳の噴火災害からの復興で整備した巨大な砂防施設群の周辺を巡る。その移動手段となるのが、島原港ターミナル内の観光案内所で借りるeバイク(電動アシスト付き自転車)だ。

 そもそも島原半島全体が近年、サイクルツーリズムに力を入れている。国土交通省九州地方整備局の企画課がその点に着目し、インフラツーリズムと組み合わせられないかと考えた。

島原市内4カ所でeバイクを貸し出す「めぐチャリ」。午前9時~午後4時(7時間)の利用で1100円(写真:氏家 加奈子)
島原市内4カ所でeバイクを貸し出す「めぐチャリ」。午前9時~午後4時(7時間)の利用で1100円(写真:氏家 加奈子)
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 初めての試みということで、九州地整は島原市しまばら観光課や島原半島観光連盟などにも協力を依頼。旅行商品化を見据えて、日本旅行業協会(JATA)とも連携し、旅行業界の関係者向けにツアーも試行した。

インフラツアーで訪れる雲仙砂防施設の全体像(出所:国土交通省九州地方整備局)
インフラツアーで訪れる雲仙砂防施設の全体像(出所:国土交通省九州地方整備局)
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 「わくわくできる体験を組み合わせることで学びのある新しい旅になれば、災害復興のためのインフラをもっと地域活性化に生かしてもらえるのでは」と九州地整企画課の藤木敏治課長補佐は期待を込める。

九州地整の藤木敏治課長補佐。「インフラの背後にある自然災害や先人たちの知恵を知ることで、難しい時代を乗り越えるヒントが得られるのでは」と話す(写真:氏家 加奈子)
九州地整の藤木敏治課長補佐。「インフラの背後にある自然災害や先人たちの知恵を知ることで、難しい時代を乗り越えるヒントが得られるのでは」と話す(写真:氏家 加奈子)
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